yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

哲学・思想・文学

池波正太郎著『作家の四季』2003年講談社刊

『作家の四季』、この本のほとんどを映画評が占める。それにしても池波正太郎という人の多才ぶり、そしてその批評眼の的確さに舌を巻いてしまう。いくつもの連載を抱えて多忙をきわめていても、映画の試写会にはでかけてゆき(もちろんプライベートでも)、…

池波正太郎の『鬼平犯科帳』

このところ池波正太郎一色という日々を送っている。エッセイ集を何冊か読んだが、『剣客商売』や『鬼平』がまだだったので、一応何冊か図書館から借り出した。欠巻で図書館にないものは買い込んだ。「鬼平」についてはあれほど有名な作品だったのに読んだこ…

池波正太郎讃

昨日仕事の帰りに書店に立ち寄り、池波正太郎の本を七冊も買い込んでしまった。たいていはアマゾンで本を買うので、実際に買った本の重みを感じながら、読む楽しみへの期待に胸おどらせるというのは久々である。待ちきれずにバスの中で読み始めた。アマゾン…

佐藤隆介著『池波正太郎の食卓』新潮社2001年刊

池波正太郎のことは『鬼平犯科帳』の作者として知ってはいたが、読んだことはなかった。剣客小説は『眠狂四郎』と『宮本武蔵』を高校生の頃に、山本周五郎のいくつかの短編を留学中に読んだきりである。だから池波正太郎が人気があるときいても、自分で読も…

神坂次郎著『元禄御畳奉行の日記―尾張藩士の見た浮世』中公文庫、1984年刊

日記というのは『鸚鵡籠中記』(気取ったタイトル!)といって、元禄期の尾張藩の下級藩士(同心)だった朝日文左衛門重章が27年にわたって書き続けたものである。Wikiにあるように、「元禄時代の下級武士の日常の記録として非常に貴重な資料」といえるだろ…

荻田清著『笑いの歌舞伎史』(朝日新聞社2004年刊)

「笑い」を昔の歌舞伎がいかに「開拓」していたのかを知りたくてこの本を図書館から借り出した。とても面白かったのみならず、きわめて啓発的だったので、結局アマゾンで古書も注文した。著者の長年に渡っての研究成果ここにありという感のある内容である。…

吉屋信子のすごさ

とにかく「すごい」としか形容の仕様がない。一種のモンスターである。それもとびきりかわいい、少女っぽいモンスターだ。この9月のオックスフォード大での発表はマンガのNANA についてである。それも主人公二人の「同性愛」についてのもので、サイコアナリ…

オックスフォード大学での発表準備

9月末にオックスフォード大学で発表をするのだが、テーマが“Representations of teenage life and teen culture”(ヤングアダルトカルチャー)なので、以前から温めていた『NANA』をもとにペーパーを書いている。発表原稿の締めが6月末だったのに、それを大…

野口武彦著『江戸の風格』日本経済新聞社、2009年4月刊

野口さんといえば、教育者としては神戸大学で長く教鞭をとられていたことと、研究者としては江戸文学の専門家としてよく知られているが、私にとっては三島由紀夫とつながりのある辛口の文芸評論家としてなじみがあった。アメリカの大学院にいたころ、江戸文…

吉本隆明の『源氏論』が優れている理由

思いつくままに以下に並べてみた。1.当時の制度、機構がこの物語にどう描かれているのかの分析が正確。どのような歴史の専門書よりもはるかに深く洞察している。それによって、『源氏』を「物語」、あるいは「説話」としてではなく、「近代小説」に通低す…

吉本隆明著『源氏物語論』洋泉社

たまたま立ち寄った書店に吉本隆明コーナーが設置されていて、最近鬼籍に入ったことにようやく思い至った。以前読んだのは初期の作品、『共同幻想論』、『言語にとって美とはなにか』、『初期歌謡論』程度で、その硬質な論はどこか近寄り難く、敬遠してきた…

“Before the Poison” by Peter Robinson

プラハ国際空港でフランクフルト行きの飛行機を待っている間、あまったコルナを使い切るため書店でこの本を買った。カバーに2010年犯罪小説ジャンルで賞を獲得したとあった。待ち時間に読もうと考えたのだが、このときもまたフランクフルトででもバタバタし…

学会終了

今日が三日目の最終日。朝9時から6時までの長丁場。疲れた!一昨日の初日のみが午後2時から5時までで、昨日も今日も律儀に朝9時からはじまって5時過ぎに終わった。普通の学会なら専門の関係分野、たとえば『比較文学」とか「シェイクスピア」というよ…

「毒婦」について

3月のプラハの国際学会での発表が『明治一代女』についてなので、年末から年始にかけてその資料にするのに二十数冊もの本を買い込んでしまった。当初、ジェンダー論とサイコアナリシスで分析するつもりだったのだが、『明治一代女』のモデルが花井お梅とい…

アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ』へのThe Economist の書評

Tweet しているThe Economist から2日前にこの記事情報を得ながら、それについて書くのがのびのびになってしまっていた。『スティーブ・ジョブズ』をKindle で読んでいるのだが、(とばしまくって)真ん中より少し先55% あたり(Kindleではページがワカラな…

アイザックソンによるジョブズの伝記

ウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ』は10月24日に世界同時に発表されることになっている。私も買うかどうか迷ったのだが、昨日Kindle版を注文した。というのも、内容にジョブズの本音に当たる部分がかなり赤裸々に書かれていることを知っ…

プラハの国際学会

提出していたプロポーザルが通ったので、論文本体を早めに仕上げなくてはならない。今年の3月にも国際学会でプラハに行ったけれど、それとは母体は同じ(interdisciplinary Net)である。英国のオックスフォード大学に本部を置いて、毎年複数の分科会が年次大…

大塚英志著『伝統とは何か』ちくま新書、2004年

最近何冊か読んだ「伝統」を扱った本の中でいちばん面白かった。というか学者らしくない切り口が、いかにも大塚英志らしくて、その知的好奇心が少しも衰えていないことが分かってうれしかった。さすが大塚英志、「伝統とは何か」を探るのに米アニメ短編映画…

松岡正剛の千夜千冊ーー里中満智子 『女帝の手記』

松岡正剛さんの守備範囲の広さにあらためて感服した。2006年4月13日の記事である。私たちは正剛さんを読書案内人にもったことの幸運に感謝すべきだろう。毎日一冊のペースで緻密な分析を施したレビューを書くなんていうことは、普通の人間には到底不可能であ…

スラヴォイ・ジジェク著 How to Read Lacan (邦題:『ラカンはこう読め』)

今日梅田に出たついでに紀伊国屋書店に寄った。思想のコーナーで目に飛び込んできたのがラカンはこう読め!作者: スラヴォイ・ジジェク,鈴木晶出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2008/01/30メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 216回この商品を含むブロ…

山本哲士著『現代思想の方法』ちくま文庫

大衆芸能史について書きたいと考え始めてから久しい。このあたりで文章にまとめておきたいと考えている。手持ちの関連書籍もいくつかあるが、情けないことにきちんと整理をしていない上、以前の関心の対象とずれてしまったこともあって、数がそろっていない…

『加藤秀俊著作集』中央公論社

加藤秀俊さんの著書は『メディアの発生』以来2冊読んだのだが、ぜひこの全集を全巻揃えたいと思ってきた。ばら売りはあったのだが、それだと巻によっては重複してしまうので、なんとか全巻一緒に入手したかった。いちばん読みたかったのが第4巻、「大衆文…

図書館がなくなる?

一昨日、ヴァンペルト図書館のEast Asian Collections の主任司書のアルバンに会った。その折に彼が日本にこの5月に来訪していたと聞いて、なぜ連絡をしてくれなかったのかとなじってしまった。私のペン大の時のメールアドレスが2009年頃まで有効だったので…

『瞼の母 長谷川伸傑作選』国書刊行会

先日長谷川伸の著作を探して大阪市立中央図書館へ行ったのだが、開架分では小説しかみることができなかったので、結局アマゾンで注文した。瞼の母―長谷川伸傑作選作者: 長谷川伸出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2008/05/01メディア: 単行本購入: 4人 ク…

「ポップカルチャー」の学会にプロポーザル提出

毎年2回は国際学会で発表することをここ数年間、自分に課してきたのに、去年度(2010年4月ー2011年3月)は1回のみプラハで3月14日から16日までのものだけだった。例の震災直後で、迷った末に出かけたので今もって「やった!」という感じがしていない。それ…

鈴木忠志著『越境する力』

一昨日、琵琶の稽古に京都まで出かけた帰りに西大谷に祖父の墓参りに行ったまではよかったのだが、帰りに気分が悪くなり、昨日は一日倒れてしまっていた。風邪がこじれたようで今もまだ熱っぽい。昨日は文楽の『心中宵庚申』をみる予定で切符まで買っていた…

小西甚一著『日本文藝史』第4巻 講談社

以前にこのブログに小西甚一さんの『日本文藝史』(全5巻)の第3巻をもっていると書いたのだが、先日書棚の整理をした折に第4巻をみつけた。あと残りの3巻分は夏休みに入ったら(前期試験期間が8月第1週まであるので、そのあと)すべて目を通すつもりである…

脇田晴子著『女性芸能の源流』

今日からマンション全体の給排水管の大規模修理が始まり、最上階の私の部屋の排水口を9時−5時で1週間使うとのことで、寝室になっている部屋の整理を昨日半日がかりでやった。そのとき、寝室においている本棚からこの本を見つけ出した。加藤秀俊さんの『メデ…

ジョゼフ・ヴォーゲル著 『Earth Song: マイケル・ジャクソンの最高傑作の内実』

原題は以下である。Earth Song: Inside Michael Jackson's Magnum Opus [Kindle Edition] by Joseph Vogel タイトルにもあるように、"Earth Song"成立の背景を描いているのだが、それ以上にマイケル・ジャクソンの芸術家/福音家(エヴァンジェリスト)とし…

小西甚一著『梁塵秘抄考』(三省堂、昭和16年)

古書ネットで手に入れた。入手するのが難しいと覚悟していたので、あまりにもあっさりと手許に届いたのがいまだに信じられない。当時「八圓」だったようである。昭和16年発行なので、もちろん「いかにも」というくらい「古い」。本そのものに痛みはまったく…