yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

アイザックソンによるジョブズの伝記

ウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ』は10月24日に世界同時に発表されることになっている。私も買うかどうか迷ったのだが、昨日Kindle版を注文した。というのも、内容にジョブズの本音に当たる部分がかなり赤裸々に書かれていることを知ったから。佐々木俊尚さんのTwitterで、アメリカCBSの"60 Minutes" インタビュー番組) にアイザクソンが登場、伝記の内容をかなり詳しく明かしているのという情報を得た。このインタビューも伝記発表の一日前のアメリカ東部(西部でも)時間午後7時に放映されるという。

早速そのCBS の記事にアクセスして読んでみたら、いろいろな興味深いことが分かった。アイザクソンはジョブズが信用し自身の伝記を全面的に任せた人で、メディアのインタビュー番組に出場するのは初めてという。もっとも、これがメディアに出まくっているような人だったら、ジョブズも伝記を一任したりしなかっただろうけど。

番組の一部が上にリンクしたCBSの"60 Minutes" の中にほんの1分程度出ている。それによるとジョブズは癌と診断された時点では外科手術を拒否、「自然療法」を受けたのだが、それを後悔していたという。8年後に出術をしたのだが、遅かったということなのだろう。アイザックソンがなぜ手術をしなかったのかと聴くと、ジョブズは身体を「開けられて冒涜される」のが厭だったからと答えたという。インタビュワーのクロフトがなぜそんなバカなことをジョブズともあろう人が考えたのだと聴くと、アイザックソンは「人というのは認めたくないことは存在しないことにして、なにか『奇跡』のようなことが起きるのを待つものだからではないですかね」と答えている。あの知的なジョブズでも「人」の限界を超えれないこともあったのだと、少し哀しくなった。

でもそれだけではないような気もする。ジョブズは若い頃から禅に傾倒し、食事などもマクロバイオティックスに拠っていたという。彼の手術拒否はおそらくそういう考え方に由来するように思う。アメリカでは日本人が驚くほどベジタリアン、それも私からみれば「?」がつくような人が多いのだが、彼もその影響を受けていたということか。「?」というのは、合理性を排した、どこかカルトの匂いがすることがあるからだけれど。

こういういわゆる「東洋系思想」の信者は普通はキリスト教的神を拒否するのだが、ジョブズは癌の診断があって以来、神の存在は50-50と考えるようになったと、アイザクソンに答えている。

もう一つ興味深かったのは、ジョブズがアップル社員たちがアップル株の値上がりで「金持ち気取り」になっているのを快く思っていなかったということだった。彼自身はその富によって「変わる」ことは神かけてなかったと、アイザクソンに断言している。これはストイックなジョブズらしいエピソードである。禅に傾倒し、またそれによって死を早めたかもしれないがそれでも自然療法に拠ったという、ジョブズの純粋でそしてどこか浮世離れした一面をよく出しているエピソードである。いわゆるアメリカ人によくある金持ち、たとえばあのスキャンダルまみれだったエンロン会長のような人たちとはまったく違った「人種」なのであり、だからこそ革命的アイデアを形にして世に出すことが可能となった、真の意味での「神の寵児」となり得たのだとも思う。