プラハ国際空港でフランクフルト行きの飛行機を待っている間、あまったコルナを使い切るため書店でこの本を買った。カバーに2010年犯罪小説ジャンルで賞を獲得したとあった。待ち時間に読もうと考えたのだが、このときもまたフランクフルトででもバタバタして読む機会がなく、機内で少し読んだだけだった。
「推理小説」なんてここしばらく読んでいないので、あまり期待しなかったのだが、賞をもらうだけのことはあった。面白い。内容が英国のヨークシャーで起きた妻による夫殺しを扱っている点には、私自身が今回の学会で夫や愛人を殺した「毒婦」について発表したことと、どこか符合していて因縁を感じてしまった。
こういう推理小説を読むときにいちばんしてはいけないことを私はしてしまう。そう、我慢できずに結末を先に読んでしまうことである。そんなわけで、もう結末は知っている。それでも次に何が起きるのかとワクワクして読んでいる。
今まで読んだところまでの内容は次のようなもの。若い頃に故郷のヨークシャーを離れてアメリカ、それもLAに渡った語り手の「私」が、ハリウッドの映画音楽の作曲家として成功したのち、妻の死をきっかけに故郷で大邸宅を買ってそこに住むことにする。その家は60年近く前に例の事件が起きた家だった。彼はその真相を探るべく、関係者に当時の様子を聞いて回る。
文章の格調も高く、描写力も非常に優れていて詩的である。さきほどネットでこの作者を検索したら、語り手の「私」と同じく若い頃に英国を出てカナダに渡り、カナダのヨーク大学で英文学でPh.D.をとっていることが判明した。そのときのチューターがなんと!あのジョイス・キャロル・オーツだったそうである。文章の格調が高いはずだと納得。この方、「Inspector Banks”(バンクス警部)シリーズ」の作者だそうだけど、このシリーズを読んだことがないので、「そう?」としかいえない。米国、英国のみならず世界中で人気の犯罪小説作家だと知った。
明日、明後日は終日ワークショップなので、つづきを読むのはそれ以降になってしまう。残念。