yoshiepen’s journal

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草薙素子降臨『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』@なんばパークスシネマ12月8日

Netflixで配信された。「攻殻機動隊 シーズン2」全12話に新たなシーンを付加して再構成した最新作劇場版になる。「シーズン1」は『SAC_2045持続可能戦争』(こちらもNetflixで配信されたシリーズ1の総集編)。

私は「シーズン1」のNetflix配信もその劇場版も見ていないので、「攻殻機動隊」は元祖版の『Ghost in the Shell』(1995) から数えてかなりのタイムラグがあるが、あまりにも拝金主義だったNetflixと再契約するつもりもないので、この劇場版のみへの感想になる。

ただ、前知識なくて見たので、ギャップがすごいというか、わけの解らないところが多かった。で、ネットで情報収集をしたのだけれど、その過程でさすが押井と唸らされた。やはり、押井チームの「哲学ぶり」は健在だと得心した。もう、狂っているんですよ、彼らは。現実世界はいずれ彼らに追いついてゆくのでしょうが、今のところ、はるかに前を走っています。怖くなります。

3週間限定公開ということだけれど、すでにネットには公式サイト以外にも様々な「解読」が飛び交っている。

www.ghostintheshell-sac2045.jp

からの解説は以下。

INTRODUCTION

人々の意思が“電脳”に繋がれた近未来において電脳犯罪に立ち向かう全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる攻性の組織、公安9課。1989年に士郎正宗により発表された原作コミック『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を起源とし、アニメーション、ハリウッド実写映画など様々な作品群が展開されている「攻殻機動隊」。

 

シリーズ最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』は、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治と、『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志が共同監督としてタッグを組み、田中敦子、大塚明夫、山寺宏一ほか『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズのオリジナルキャストが再集結。Production I.G × SOLA DIGITAL ARTSにより制作され、シーズン1が2020年4月より、シーズン2が2022年5月よりNetflixにて世界独占配信が開始。また、シーズン1を再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』は2021年11月より劇場公開され、その鮮烈なSFアクションと、時代を予見した世界感とドラマにより、新たなファンを獲得し続けている。

 

前作『持続可能戦争』に続き、日本アカデミー賞6部門受賞の『新聞記者』や『余命10年』の藤井道人が監督として、シーズン2を新たなシーンと視点により劇場版として再構成。シリーズ集大成となるラストが描かれる――

 

STORY

2045年、経済災害とAIの爆発的な進化により

持続可能な戦争が拡大していく世界

草薙素子率いる公安9課は

核大戦の危機を阻止すべく

“ポスト・ヒューマン”シマムラタカシの待つ東京へ向かう――

さらに数多ある、「解読」の中で最も詳しかったのは「【攻殻機動隊SAC_2045】シーズン2感想・考察・解説(後編)!ダブルシンクは消えていない?【攻殻機動隊2045】」だった。gatoさんが解説しておられる。

animedeeply.com

最初からこれを読んで準備しておけばよかったと後悔。なぜなら最も役だったのがこの冒頭の作品総括。お借りする。

最初に『攻殻2045』の世界観について総括しましょう。

今作の一連の騒動はG4(アメリカ・中国・EU・ロシア)が互いが「ウィンウィン」になることを目的に経済行為としての戦争であるサスティナブル・ウォー(持続可能戦争)に端を発しています。

 

この状況ですが、実は『1984』の世界観と酷似していることが窺えます。

 

『1984』はビッグブラザーが治めるオセアニアとイースタシア・ユーラシアの三勢力が互いに戦争をしあっていますが、これは富と労働力を浪費することで反政府勢力を抑制し、互いの支配体制を維持するためのゼロサムゲームのようなものであり、「永久戦争」とも呼ばれていました。

 

この点はそのまんま『攻殻2045』と重なりますね。

 

しかし、決定的に違うのはサスティナブル・ウォーを引き起こしたAIの1A84がアメリカの要求に応えるために世界同時デフォルトを引き起こした挙句、NSAによる凍結を免れるために逃走し、自身のミームをばら撒くことでポスト・ヒューマンを生み出した点です。

 

G4がサスティナブル・ウォーを利用して自分達の利益を享受しようとするやり口は非常に『1984』的な方法であり、ある意味彼らこそ(特にアメリカ)がビッグブラザーといえるでしょう。

 

しかし、そんな彼ら、特にアメリカに利用された1A84は「人類の恒久的繁栄」を目的としており、富のバランスや弱者を重視するなど、考え方は全く『1984』的ではありません。

 

そして1A84によって産み出されたポスト・ヒューマンは既存の社会構造の転倒を目的に様々な事件を引き起こした結果、ついにタカシによって人類は(一度は)敗北を迎えてしまいます。

 

つまり『1984』を下敷きにしている『攻殻2045』は『1984』的な社会構造の崩壊と支配者としてのビッグブラザーの敗北を描いている物語と総括できるでしょう。

おまけに皮肉なのは前編の記事でも記載したように、タカシが『1984』的な方法を転倒してNを生み出して人類を敗北に導いたという点です。

『1984』的な社会構造を作り上げた勢力が『1984』的な方法で敗北させられる…いささか痛快な趣もありますね。

 

そしてこれを念頭に置くと、個人的に『1A84』のAは「Another」を意味しているような気がします。

 

『1984』的な方法を転倒することで構成されたもう一つの『1984』的世界…みたいな。

まぁ『1984』的な方法の結果、つまり「答え」としての『1984』的世界という意味で「Answer」でも収まりは良さそうですけど(笑)

このサイトには他にも攻殻2045シリーズの解説がいくつも掲載されているが、それを一覧にしたものをリンクしておく。上にあげた「ダブルシンクは消えていないはそれらの総括版になっている。

もう一点解説サイトとして、「考察機動隊」さんのYouTube上の解説をあげておく。

www.youtube.com

 

1.歓喜したのは、最終場面。あの1995年劇場版の最初のシーンと激似の、素子がネットの海に飛びこむシーン。

2.さりげなく場面片隅に置かれていたジョージ・オーエルのSF小説『1984』(1949)。これ、大学生の時に読まされたけれど、ちんぷんかんぷんだった記憶が。「攻殻」と同じくあまりにも時代を先取りしていたんでしょうね。「101号室」、「ダブルシンク」等の語彙はここからきている。「ディストピア」なんて発想、子供に分かるはずもないです。

gatoさんの解説にもあったように、「攻殻」は『1984』を発端とすることをビジュアルに示した場面だった。

3.江崎プリンが『Ghost in the Shell』の続編劇場版『Innocence』(2004)最終場面に出てきた少女に重なった。この少女が素子と人形使いとが合体したものだったのかどうか、ずっとモヤモヤしていたのだけれど、やはりという感じがした。

それにしても未だにはっきりしないのが、今回の冒頭シーン。トグサがなぜ捕囚されたのか、それからどうやって逃れたのか(パラレルワールドへとワープした?)、それから地球に帰還後、捕囚中に出会った男と電車内で再会するのだけれど、その顛末はどうなったのか。もっと解らなかったのは、映画の中途で突如としてトグサが登場するのだけれど、そこまでの経緯は?と謎だらけ。繋げるには最低でもシーズン1の総集編である劇場版を見なくてはならないのだろう。

難解な断片が次々に出てきて、それらのリーズニングが終わる前にまた違ったストーリーに飛んで、「?」がいくつも重なり合っていたのだけれど、それでもワクワク感はやはりあった。ただ、ハリウッドもどきの戦闘シーンがやたら多いのはいただけない。フワーッとストーリーが入っていく過程で、それをバリバリとバトルに次ぐバトルが切り刻む気がした。タチコマの闘いもタチコマらしさが減じてしまっていた。

かなり違和感があったのが、草薙素子の容貌。イマドキの観客、もっというならNetflix視聴者に合わせたのかもしれないけれど、前の方が良かった。「2045」版ではすべてこちらなのだろう。残念。

私が『攻殻機動隊』に出会ったのは2006年から2007年にかけてペンシルベニア大学に研究員でいたおり。その時に「日本映画」のクラスTAとして(元祖)劇場版の『Ghost in the Shell』(1995) を学生たちと一緒に見る機会があり、衝撃を受けた(この経験は当ブログにも以前アップしました)。アニメがここまでの哲学的な体験をさせてくれるのかと、今までの価値観がひっくり返るほどの鮮烈な体験だった。

それから劇場版の元になっているテレビ版のシリーズを集めたけれど、劇場版から受けたほどの感動はなかった。

それから10余年以上経過、今回観た映画版の元になっているNetflix配信のシリーズのことは全く知らなかったし、ましてや劇場版になっていることも知らなかった。だから、このシリーズ2の総集編たるこの『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』のことも知らなかった。ただ、遭遇したとしても、さほど強烈なインパクトを感じなかったかもしれない。かなりハリウッド映画的な(あえていうなら映画『マトリックス』的な)大衆迎合的な匂いを感じてしまったのではないかと思う。

今回あえて観にゆこうと思ったのは、単に出来心。CMの次のようなフレーズに誘われたから。

2045年。全ての国家を震撼させる経済災害「全世界同時デフォルト」の発生と、AIの爆発的な進化により、世界は計画的且つ持続可能な戦争“サスティナブル・ウォー”へと突入した。だが人々が、AIによる人類滅亡への危機を日常レベルで実感できるまでには衰退の進んでいない近未来――。

電脳社会に突如出現した新人類“ポスト・ヒューマン”による電脳犯罪を阻止すべく、総理の密命により再び組織される公安9課。日本においてポスト・ヒューマンに覚醒したとされるシマムラタカシの捜索中に失踪したトグサを追い、全身義体のサイボーグ・草薙素子率いる公安9課は、先の大戦で廃墟と化した東京へと向かう。そこで草薙たちを待ち受けていたのは、自らを「N」と名乗る難民集団と、介入するアメリカの特殊部隊だった。奪取された原子力潜水艦による核大戦の危機が迫るなか、公安9課、アメリカ、ポスト・ヒューマンによる三つ巴の戦闘が激化していく――。

まさに世界の現在のそして未来の混沌がここに集約されているんですね。それと「人間」でいるなら、どの選択肢を採るのかという問題も突きつけられているような気がした。