yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

羽生結弦選手、絶対王者の演技 in「全日本フィギュア選手権2021」@さいたまスーパーアリーナ12月26日

最初の4アクセルジャンプ。こらえてのグッと踏みとどまる演技。美の乱れはない。あらかじめ想定されていたかのような流麗な流れの一環にすらみえる。4Aに全身全霊で立ち向かってきた長い時間が透けて見える強い「念」の入ったジャンプ。それなのに不思議と自然、必然という感じがするのはなぜなのだろう。神がかっていると思うのはこういう一瞬である。霊が確かにおりて来ていた。論ずるのさえ憚ってしまうような超絶。

流れるような美しい演技は以前の「天と地と」のときと同じだけれど、そこに斬り込み、切り裂くような鋭利さがより加わったように感じた。そこに超絶を断つ人間味を感じて、ちょっとホッとする。彼も私たちと同じ人間界の人なんだと。

私は彼のスピンが演技の中ではとりわけ美しいと思うのだけれど、今回は確信犯的な美しさの中にどこか強い念を感じる。その念は想像するに前の「天と地と」から経過した時間が生み出したもの。長く苦しかった(であろう)時間が生み出した念とその表現体としての鋭利。それはこの曲の主人公、上杉謙信の雄々しくも苦しい戦いへの想いと重なる。羽生結弦選手が前の「天と地と」からの時間経過の間に咀嚼し、自己のものとせざるを得なかった苦悩と、それをねじ伏せ切り開いた精神的強靭をも感じさせるものだった。見ている者が切なくなるのは、それを追体験させられるからではないだろうか。単に「優美で素敵!」なんてのんきに言っていることができなくなる。

途中の転調部で思いっきり両腕を天に向けて差し伸べるところの彼の表情は切ない。そのあと手をリンクに付けて頷くのは、まさに「天と地と」の軸になる自身を表現している?そう、あなたしかいない。天と地を結ぶことのできる戦士は。天上界と人間界を結ぶ戦士なんですよね。

次の展開でのスピンのコンピネーションもいつもながらに美しのだけれど、やっぱりどこか切ない。そのまま、最終幕に突撃するのもこちらの胸が苦しくなってしまう。ジャンプの精度は素晴らしく完成もパーフェクトなのだけれど、ジャンプにより、スケーティングとスピンに彼の苦悩の時間が顕れているように思った。それによって、曲解釈がより深まり、その結実としての超絶演技となっているのだと感じた。

「天と地と」の演技については以前に記事にしている。同じようでいて、やはり時間経過を感じてしまうことが改めて感慨深い。

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