yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「霜(そう)乃会」公演@HEP HALL 9月29日昼の部

異分野のコラボといっても「古典芸」という共通項で結成された若手芸能者の会。見るのは初めてである。チラシとサイトに掲載された出演者一同の写真をアップしておく。

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以下が当日の演目。

  1. 浪曲《比良八荒 ひらはっこう》

  出演:京山幸太 (曲師)一風亭初月

  1. 文楽・素浄瑠璃《生写朝顔話・明石船別の段 しょううつしあさがばなし・あかしふなわかれのだん》
    出演:(太夫)竹本碩太夫 (三味線)鶴澤燕二郎 (琴)鶴澤清方
  2. 講談《名月松坂城 めいげつまつざかじょう》
    出演:旭堂南龍
  3. 能・仕舞《龍虎 りょうこ》
    出演:(虎)今村哲朗 (龍)林本大 
       (地謡)武田宗典・樹下千慧・寺澤拓海
  4. 落語《池田の猪買い いけだのししかい》
    出演:桂紋四郎
  5. 茶道
    出演:松井宗豊

知っている演者の方は2の文楽と4の能の方々のみ。そもそも浪曲も講談も、さらには落語ですら実際の演奏を聴くのは初めての経験だった。

1の浪曲「比良八荒」は別の浪曲では旅芝居(大衆演劇)にも度々かかる「河内十人斬り」によく似た話だった。間の取り方が絶妙だと感心。女性の浪曲師でパワフルな方だった。

2の「生写朝顔話」は以前に何度も文楽で見た演目。若手の注目株である碩太夫さんと燕二郎さんは最近、ほぼ全公演に出演されている。今やベテラン枠に入っている織太夫さんの、熱量の高い(大阪風の)独特の語りと比べると淡々という感じが、万人受けするだろうと思っていた太夫さん。ただ最近はかなり濃い演奏になってきた印象。三味線の「燕二郎」は現在の燕三さんがもともと名乗っておられた名跡で、どうしてもお若い頃の燕三さんが被ってしまう。今の燕二郎さんも体躯はお師匠に似ておられるけれど、芸風はもっと控えめな感じ。さすが文楽の語り、このお二方の演奏はやはり迫力があった。

3の講談「名月松坂城」は旅芝居によくある筋立て。ちょっとニヒルな感じの旭堂南龍さんの語りは人を逸らさないものだった。でも私としてはどうしても芝居の舞台が目に浮かんでしまう。「ここで殺陣が入るんだ」なんて想像しつつ見ていた。 

4の能「龍虎」は初めて。2年前に大阪の「大連吟」での先生、今村哲朗師と関西圏で活躍される村本大師の龍と虎に模しての大立ち回りが、迫力満点だった。 

5の桂紋四郎さんの落語は非常に手練れのものだった。私は落語があまり好きではなかったけれど、「寄席によってみてもいいかも」なんて、考えつつ見ていた。これも情景が浮かんでくる熱演だった。

最後の裏千家の松井宗豊さんのお点前、これで出演者全員による座談が締めくくられていた。

能の異分野のコラボは山本能楽堂で当主の山本章弘師がよく試みておられ、私はほんの2回ばかりお邪魔した。最近は英語能などにも「挑戦」されているようである。そういえば狂言も文楽と組んで、そこに英語の訳をつける試みをされていた。新しい試みはなかなか浸透するのは難しいだろうけれど、それによって今までになかった何かが生み出される可能性が高まる。互いにぶつかり合うことで、化学反応が起きるのだろう。そこからまた分離するのか融合するのかは未知数だけれど、試みる価値が確かにあるというのが今回の公演を見ての感慨である。

この日の観客はどの方のファンなのだろうか。着物姿の中高年女性が多かったところをみるとお茶の方たち?今までに見てきた演劇ジャンルの客層とはかなり違っていた。中高年女性以外の人は小劇場での客と共通した感じだった。満員御礼で、こういう公演に大阪の人は飢えているんだと、改めて思った。