yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『紅葉狩』in「夏休み文楽公演 第三部」@国立文楽劇場 7月17日

地下鉄の日本橋駅を出て文楽劇場へゆく地下道に、また大阪地下鉄の主要駅などそこかしこに、文楽公演のCMにしては少々派手目のポスターが登場、人目を引いている。

ネットで調べると、以下のような解説文が付いていた。

「東京・国立劇場の7月歌舞伎鑑賞教室、大阪・国立文楽劇場の7・8月夏休み文楽特別公演で上映される「紅葉狩」と、「刀剣乱舞-ONLINE-」に登場する「刀剣男士 小烏丸」のコラボレーションが決定しました。

「刀剣乱舞-ONLINE」というPC版オンラインゲームの中に登場する刀キャラの名が「小烏丸」で、それが『紅葉狩』で平維茂が鬼女退治に使う刀と同名であることからの今月の文楽公演の出し物の一つ、『紅葉狩」とのコラボ・キャンペーンらしい。

私はゲームをしないので、この手のことに不如意ではあるけれど、このコラボで若い層が文楽に興味を持つきっかけになってくれればいいなと思う。上のポスターの真ん中に立っているのが小烏丸。かっこいい!それを挟んで左側に今回の文楽公演の維茂、鬼女、更科姫の人形たち、右側に歌舞伎版の維茂(松緑)、更級の前(梅枝)、鬼女が配されている。キャッチコピーが「文楽で見るか/歌舞伎で見るか」。少し残念なのは、ここに能の『紅葉狩』が入っていないこと。まあ、ゲームキャラの派手さに対抗するには、能は路線が違いすぎるかも。とはいえ、能の『紅葉狩』は能にしては登場人物の人数、衣装、所作共に結構派手な演目。登場する姫と侍女、鬼女たちの装束はとても華やかなものである。それにけっこう派手な立ち回りがある。「静」ではなく「動」で魅せるところは、文楽、歌舞伎と共通している。それにけっこう派手な立ち回りがある。「静」ではなく「動」で魅せるところは、文楽、歌舞伎と共通している。

この日の観客がいつもよりも若い人が多いのは、このポスターが功を奏したのかもしれない。演者はこの前の記事にもスクリーンショットをアップしたけれど、再度載せておく。

呂勢太夫の更科姫は実にぴったり。前場は高めの声、後場の鬼女になってからは低い声に替えていて、変身の効果を出していた。呂勢さん、最近は声調がだいぶん低くなっていると思っていたら、あれは人物に合わせてのものだったんですね。維茂役の芳穂太夫さんも好きな太夫さんの一人。お二人の掛け合いは統制が効いていて、見事だった。声はお二方ともに高めなんですよね。それがこの芝居が童話というかファンタジーであることを、無理なく伝えるのに成功している要因になっているように感じた。

人形の方は更科姫の一輔さんが素晴らしかった。見るたびに技量を挙げておられ、もはや名人の域。前場、更科姫が舞を舞うところ、扇の使い方、身体の微妙な傾け方、ねじり方に唸った。後場で鬼女になっての気振りも、歌舞伎役者顔負けのダイナミックさ。自分で演るより人形で表現する方が数倍難しいはずなのに、あっさりと事もなげに演り終えられた。拍手はあったけれど、私としては嵐のような拍手になって欲しかった。

文楽、歌舞伎ともに『紅葉狩』は何度も見ている。

文楽版で見た『紅葉狩』の直近のものは2017年11月の文楽劇場でのもの。この時の維茂は芳穂さん、更科姫は呂勢さんで今回と同じ配役。記事にしている。

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歌舞伎の直近は2018年10月の歌舞伎座でのもの鬼女を幸四郎、維茂は高麗蔵だった。こちらも記事にしている。

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歌舞伎版は姫に次女が4人付くが、これは能と同じ。華やかさが前面に出る演出が能からきているのも興味深い。これは文楽より能に近い。何れにしてもこのように能・歌舞伎・文楽を比較して見るのも一興かもしれない。「文楽で観るか、歌舞伎で観るか、あるいは能で観るか」。ぜんぶ観るのがいいのかもしれない。