yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「第38回文楽入門 『五条橋』」@国立文楽劇場 6月16日

「五条橋」は『鬼一方眼三略巻』の五段目に当たるのだけれど、文楽では2011年に当文楽劇場で見て、記事にしている。

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そこにも書いているけれど、若手太夫と三味線の合奏だった。演者一覧をアップしていないのが、残念。「五条橋」は呂勢太夫さんが牛若だった。彼の相三味線は清治さんなので、彼が三味線の音頭をとられた。

残念ながらはっきりと思い出せないのは、それまでに何度も見ていた歌舞伎の『鬼一方眼三略巻』があまりにも強い印象を残していたからだと思う。通しでやることはあまりなくて、私が見たものをあげれば、2012年12月国立劇場での通しに近いもののみだったと思う。この時の吉右衛門の一條大蔵卿が素晴らしかったのに、なぜか記事にしていない。

歌舞伎では「菊畑」、「奥庭」、「一條大蔵譚」としてその組み合わせ、あるいは単独で舞台にかかることが多い。特に「一條大蔵譚」として一條大蔵卿に吉右衛門、仁左衛門、菊五郎などの時の重鎮役者を配し、一條大蔵卿に特化したストーリーに組み立ててあることが多かった。だから文楽版とはかなり様相が違っていた。

『歌舞伎演目案内』のサイトをリンクしておく。この中には全体像が丁寧に解説されているので、「五条橋」の意味もはっきりとわかるはず。基底にあるのは朝廷を巻き込んだ源氏と平家との二代にわたる抗争であり、その長い物語の最後にこの「五条橋」を持ってきた意味はそこにあったのだろう。

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長い前置きになってしまったけれど、この日の演者は牛若丸が希太夫さん、弁慶が咲受太夫さんと、私の好きな太夫さんたち。牛若丸の人形の勘次郎さん、弁慶の蓑太郎さんも若手でキビキビとした動きが小気味よかった。すらりと橋の欄干に跳び乗り、片足立ちで太刀を使いつつ、弁慶をからかうのが牛若丸のイメージにぴったりである。無骨で逞しい弁慶が女と見誤ってしまうのがおかしい。淡い色の薄衣を脱ぐとそこには美少年っていうんですからね。その時の弁慶の心理を想像してしまいます。

弁慶秘術を尽くせども、ついに薙刀打ち落とされ、組まんとすれば切り払う。縋らんとするも頼りなく、詮方尽きて橋桁を二、三間飛び退理、呆れ果てて立ったりける。

そこから名乗りがあり、弁慶は牛若丸に生涯仕える決心をする。

主従三世の縁の綱、約束長き五条の橋、橋弁慶と末の世に、語り伝えて絵にも描き、祇園祭の山鉾にも祝い、飾るぞ目出たけれ 

能の「橋弁慶」への言及があるけれど、ちょうど先日からこの謡の稽古に入っている。状況描写がとても細かく、生き生きとしていて、読むぶんには楽しいのではあるけれど、謡うのは実に難しい。

以下に公演チラシのあらすじと役者一覧をアップしておく。私が見たのは後半部の2時からのものだった。

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