yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

映画『チョコレートドーナツ』(原題 Any Day Now) @テアトル梅田8月21日

「テアトル梅田」のサイトから借用した引用が以下。

監督 : トラヴィス・ファイン
出演者 : アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、フランシス・フィッシャー

全米映画祭の観客賞を総ナメにした
実話をもとに生まれた魂を震わす感動作


★2012年トライベッカ映画祭:観客賞
★2012年シアトル映画祭:観客賞(作品&主演男優)
★2012年シカゴ国際映画祭:観客賞
その他、7映画祭で受賞!



こころにぽっかり空いた穴を
埋めることなんてできないと思っていた。
あなたに会うまでは。
マルコが好きだったもの。人形のアシュリー、ディスコダンス、ハッピーエンドのおとぎ話、そしてチョコレートドーナツーー。

マルコは僕らに家族をくれた。僕らはマルコをなにがあっても守ると約束した。
僕たちは忘れない。マルコと過ごした愛しい日々。

1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐルディ。
正義を信じ、世界を変えるため弁護士になったポール。
母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年・マルコ。
世界の片隅で3人は出会った。

ルディとポールは愛し合い、マルコとともに幸せな家庭を築き始める。
しかし、彼らの幸福な時間は長くは続かなかった。
ゲイであるがゆえに法と好奇の目にさらされマルコを奪われてしまう……。
血はつながらなくても、法が許さなくても、奇跡的に出会い深い愛情で結ばれる3人。
見返りを求めず、ただ愛する人を守るために奮闘する彼らの姿に我々は本物の愛を目撃するだろう。

ゲイ映画はできるだけみることにしている。「東京テアトル」の株主優待無料券を使っての鑑賞。去年も一昨年もこの優待を使わずじまいだった。テアトル系の映画館がレベルの高い作品を上映していることを、今回初めて知った。梅田シネ・リーブルも良い映画を上映しているようなので、近々でかけるつもり。ハリウッド映画にはうんざりなので、鉱脈を掘り当てた気分。うれしい。

ただこの映画にはかなりがっかりした。「観客賞」をいろいろな演劇祭でもらっているというふれこみだけれど、「ホント?」という感じ。「実話をもとにしている」というわりには、(映画としての)リアリティに欠けていた。もちろん70年代、80年代のアメリカは、開放的なカリフォルニアとはいえ、ゲイに対する差別がひどかったことは周知の事実である。『ハーヴェイ・ミルク』(1984)などがそれを余すことなく暴いている。この『ハーヴェイ・ミルク』はドキュメンタリータッチではあるものの、現実の理不尽さを描いた秀作だった。長い間私にとっては「幻の映画」だったのだが、ある映画祭で観ることができた。

『ハーヴェイ・ミルク』で主演を務めたハーヴェイ・ファイアスタインの自伝的作品、『トーチソング・トリロジー』(1988)のような、舞台をそのまま映画化した作品もある。そういえばこの5月にはNYのヴィヴィアン・ヴァーモント劇場で彼の主演の舞台を観たんだった。彼はゲイのアイコンになっているのだろう。彼の醸し出すペーソス、ユーモアは絶品である。残念ながら今日みた映画にはそれがなかった。

この映画のように「現実らしい」現実をそのまま提示されても、観ている側は受け入れ難い。ましてや日本のように文化が異なるところにおいては。演劇としての、あるいは映画文脈への「昇華」がどうしても必要になる。今日の映画はそこがあまりにもベタだった。あのホモフォビアの時代、いかにゲイは過酷な差別に曝されていたのかを感傷的に示してみせただけだった。「差別」を受けた登場人物の言説(いかにひどい差別を受けたか)と映画の言説との間にいささかの齟齬も許さないセンチメントで描いていた。これだと観客参加の余地がなくなるでしょう?

「文学作品」としてはやっぱり『アナザー・カントリ―』(1984)、『ブロークバック・マウンテン』(2005)が優れた作品だと思う。今日の映画と近いテーマだと『苺とチョコレート』](1994)になるかもしれない。こちらの方が数倍感動的だったけど。