「歌舞伎美人」から配役とみどころをそのままお借りする。
<配役>
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巴御前 |
中村 七之助 |
<みどころ>
洒落た趣向の、豪奢な舞台
源平合戦の後、権勢を振るう蒲冠者範頼が催す宴で、窮地に立たされているのは、清水冠者義高。そこへ「暫(しばらく)」と響く声とともに現れたのは、巴御前で …。
歌舞伎十八番の一つ『暫』の主人公を女方に書き替えた、趣向に富んだ祝祭劇。勧善懲悪、個性豊かな登場人物たちにもご注目ください。
確かにこの通りで全体像はわかるのだけれど、入れ替わり立ち替わり出てくる人物の関係、背景がこれではほとんど分からない。ということで以前に見た『女暫』に付いていた「みどころ」をそのままこの後再掲する。2015年10月の「大阪平成中村座」の『女暫』の記事は以下である。
この公演に付いた「みどころ」は以下である。今回のものより、人物の関係がよくわかる。
北野天神の社頭では、天下を奪い取ろうと窺う蒲冠者範頼が家臣を従えて祝宴を開いている。家臣たちが祝儀を述べる中、木曽義仲の嫡子・清水冠者義高は、傲慢な振舞いの範頼を諫め、紛失したとされる宝剣・倶利伽羅丸を隠し持っていることを指摘。これに対して範頼は、宝剣のことは知らないと騙り、義高の許婚・紅梅姫を差し出して自らに服従するよう迫る。しかし、義高たちがこれを拒むので、彼らの首を刎ねるため範頼の愛臣・成田五郎が呼び出されてやってくる。
まさに首が刎(は)ねられようと太刀が構えられたそのとき、どこからか「暫く」という声が聞こえる。声の主は、木曽義仲の重臣である今井四郎兼平の妹・巴御前。範頼は巴御前を追い払うように家臣に命じるが、その威勢には誰も敵わない。範頼の不遜な振る舞いを責め、やがて宝剣を取り戻した巴御前。その場を立ち去ろうとするところを遮られると、大太刀を抜き…。歌舞伎十八番の一つ『暫』を女方が演じる『女暫』は、古風で様式美に富んだ色彩豊かな舞台です。みどころは、女ながらも武勇に優れた巴御前の出で、「暫く」と声をかけ、大太刀を腰に帯びた颯爽とした素襖姿で現れ、ツラネを披露します。荒事の豪快さと同時に、女方の色気と艶やかさを備えた趣向に面白みがあります。華麗な一幕をご覧ください。
「新趣向」はここかしこに見られる。まずは配役。10年前のものと比較すると色々と発見がある。
巴御前の七之助はそのまま。舞台番は公演の頭取が務める決まり?で、今回は幸四郎。前は勘九郎で兄弟の仲の良い掛け合いが微笑ましかった。勘三郎追追善の意味もある公演だったので、役者は中村屋関係者で固めていた。
範頼は芝翫(前橋之助)でそのまま。轟坊震斎はなんと巳之助。前は彌十郎だったので大役を張ったことになる。いささかの滑稽味を加えたところに巳之助らしさが滲んでいた。
手塚太郎役、以前は鶴松だったが、今回は勘太郎。若手の登竜門的な役柄なのかも知れない。口跡がしっかりしていて、きちんと稽古しているのがわかる。昔の勘九郎を偲ばせた。
若菜役の新悟はそのままだけれど、紅梅姫は笑也と若干年嵩になっていた。とはいえ、沢瀉屋は彼と寿猿のみ。その他の武者たちもけっこう家のばらつきがあり、「若手」に重心を置いた配役になっていた。
七之助の美しさは以前と変わらず。加えて色気がいや増しているような感じがした。最後の花道寄りの掛け合いで、七之助が幸四郎に「高麗屋の兄さん」と呼びかけ、「立てる」雰囲気がおかしい。そりゃ、幸四郎は「六方」の手だれ者ですから、当然でしょう?コケティッシュで可愛い七之助だった。
若手の登竜を強く印象付ける舞台だった。それもさまざまな家から引っ張ってきていて、猿之助が指揮したスーパー歌舞伎の『ワンピース』を思い出させた。これは松竹の新しい方針なんでしょうか?