正月らしい華やかな舞台だった。「正月」を寿ぐ3本の小品が演じられたのだが、中心になっていたのは若手陣だった。彼らが7、8年前までの正月は浅草公会堂での若手歌舞伎に出演していたことを思うと、随分と「出世」したものだと感無量だった。彼らの実力では当然ではあったけれど、従来の歌舞伎では大御所が大きな役どころを演じる—特に正月公演では—のが常だったので、かなり意外だった。それも嬉しい「意外」である。興行主の松竹も大御所を立てるのを止めたのだと推察する。集客のために当然の措置だと思う。猿之助がずっと若手を育て、若手と組んで芝居を作ってきたその成果が実った結果ともいえるだろう。
最初の「正札附根元草履」はいわゆる曽我物。五郎を巳之助、朝比奈を歌昇が演じた。荒ぶる五郎を朝比奈が「廓の遊女」の体で、つまり女方の振りで止めるというのが、コメディタッチで描かれる。ばかばかしさが楽しい。二人とも浅草時代からタグを組んで気心が知れた同士である。だから、洒落た作品に仕上がっていた。
二番目にきたのは「萬歳」。こちらは中堅勢。舞台は1本目の時代物とは打ってかわって世俗の街角。萬歳役の梅玉、才造役の勘九郎と幸四郎が「商売繁盛」を祈念しながら舞い踊る。この三人が若手のサポートをしていることが、観客にわかるようにとの二番目だったのだろう。
最後の「木挽の闇争」はこの初春公演を飾る若手陣の揃い踏み。巳之助、隼人、新悟、右近、米吉、歌昇、廣太郎らがあの余りにも人口に膾炙した「曽我兄弟と工藤祐経との対面」の場面に打ち揃う。それを補佐するのが年上の笑三郎と松江。この種曲は2010年4月に歌舞伎座で上演されたものだという。「木挽町」とわざわざ断ったところに松竹の新たなる決意がのぞいている気がした。また、最後の「ダンマリ」場面はまさに歌舞伎の真骨頂を具現化していて、ワクワク感が止まらなかった。アッパレ!
歌舞伎座は満員御礼だった。最近は歌舞伎をあまり見なくなったとはいえ、一応歌舞伎会の会員なので、一般販売の1日前にサイトに入ってチケットを予約したのだけれど、良い席はあまり残っていなかった。いつもは三等席のところを今回は奮発して特別席にしたのだけれど、それもかなりlimitedで驚いてしまった。例の映画『国宝』効果なんでしょうか。男女を問わず40代、50代の人たちが増えたのはとても喜ばしい。また、何よりも松竹が若手を前に出す方針に改めたのが特にうれしい。猿之助があんなことになって、あまり歌舞伎を見なくなっていたのだけれど、東京に通ってみようかと思っている。