自分でも驚いているのだけれど、観劇歴30年の歌舞伎を見たいという欲望がすっかり減じてしまった。エンターテインメントとしては、大衆演劇の優れた劇団の方がずっと観劇する価値があると思う。良くも悪くも松竹という大きな傘の下で安住してきたことで、ここ3年のコロナ禍という危機に適切な対応を取ることができないという結果になったのでは。観客層の変化もそれに追い打ちをかけたように思う。
まあ、「ナンチャッテ歌舞伎」を標榜するモドキ役者の海老蔵の「団十郎襲名披露興行」をやるようでは、松竹はその存在意義を問われるのではないか。松竹歌舞伎会のメンバーシップも辞めようと考えている。唯一「役者」の矜持をみせる猿之助、幸四郎、菊之助は、公演がかかる折にオケピでチケット入手も可能ではあるし、玉三郎、仁左衛門も単発チケットの入手は可能である。
それに対して、落語や講談、浪曲等には優れた若手人材が多いように思う。コロナ禍にもめげず、そこそこ集客しているのがその証拠である。
能は(私の感触では)コロナ禍以前よりも観客数が増えているような印象を持っている。関西でそれなので、東京ではさらにその傾向が強くなっているのでは。難しいと敬遠されてきた能楽ではあるけれど、その魅力にその癒しの力に気づく人が増えてきたのではないだろうか。コロナを経て、人が芸能に求めるものに変化が出てきたということだろうか(私の勝手な憶測ではあるけれど)。
ということで、今月も能の観劇が多くなる。京都観世会館では社中会が4つあるけれど、全て見に行くつもりである。先月の見に行った社中会でも失望がなかった。どれも素晴らしもので感激した。能が入っているものは特によかった。
今月の社中会で特に楽しみにしているのは「片山幽花会」で、以前の同社中かいで驚嘆した木村厚さんという方がシテをされる。
能楽(正規)公演では京都観世会例会、「観世左近元正追善能」を見る予定。
変わり種では京都大学観世能と同志社大学EVE能で、いずれも大学生が主体の公演である。レベルが高いのは確信しているので、楽しみである。
大衆演劇では梅田呉服座公演の「たつみ演劇BOX」を見る予定である。古典系の芝居が非常に優れていて、歌舞伎の上を行く感じがする。座長二人が優れて美形であるのもうれしい。