浦田保親師の仕舞「嵐山」は蔵王権現の舞とのことで、華やぎと雄々しさとが一体となっていた。浦田師は昨年配信された「<きょうの能楽師>仕舞編」#10」ででも同曲を舞っておられる。YouTubeサイトをリンクしておく。
詞章を度々引用させていただいている「plala」サイトより、仕舞部分をお借りする。
さて又虚空に御手を上げては忽ち苦海の煩悩を払ひ
悪魔降伏の青蓮のまなじりに光明を放つて国土を照らし
衆生を守り 誓を顕し子守勝手蔵王権現一体分身同体異名の姿を見せて
おの/\嵐の山に攀ぢのぼり。花に戯れ梢にかけつて。
さながらこゝも金の峰の光も輝く千本の桜 光も輝く千本の桜の
栄ゆく春こそ久しけれ
蔵王権現と子守明神、勝手明神が三位一体となる最後の場面である。元は吉野にあったのが嵐山に移植されたという「桜」を賞でる趣向らしい。脇能ながら、華やかな舞が舞台を彩っていて、目も耳も楽しませてくれる。浦田師が花を賞でる喜びを全身で表現されていて、見応えがあった。浦田師の声は独特の伸びやかな艶があり、耳に心地よい。
この仕舞を含めて後半の仕舞、「兼平」、「船橋」は趣向というか風が同じ感じで、優美と躍動感とが一体となった仕舞だった。しっとりというより、勢いがあった。若々しい舞台で、このコロナ禍の憂鬱な気を吹き祓うような強い気を感じた。