yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「すはま会」(第三回)@河村能舞台 9月22日

林宗一郎師と林同門会主催の催し。内容と演者は以下の通り。

★お話し 林宗一郎


★独吟 「隅田川」  河村晴道


★仕舞 「松虫」キリ 林宗一郎

★仕舞 「楊貴妃」  河村和貴
★仕舞 「藤戸」   松野浩行

  仕舞の地謡方:  國長典子、河村和貴、林宗一郎、松野浩行、樹下千慧


★連吟 「巴」 河村浩太郎 樹下千慧


★お話し 河村晴道


★素謡 『松風』

 シテ(松風)   田茂井廣道 

 シテツレ(村雨) 味方團、

 地謡       田茂井廣道、味方團、河村和重、河村和晃


★仕舞 「松浦佐用姫」 林宗一郎

林宗一郎師の「お話し」では、演目は「悲劇的死」を迎えた主人公を軸に選ばれたとのこと。いずれも私が過去に見たことのある能の演目で、比較的「わかりやすい」ものを選ばれていた。ということは、この「すはま会」の主旨はおそらく能の普及を眼目にした会ということなのだろう。ただ、この日の観客は総じて能のクロウト連だったようにお見受けした(とはいえ、みなさん熱心にレクチャーに耳を傾けられておられた)。一つ一つの演目の解説もしていただき、満足度の高いものになっていた。

二つ目の仕舞、「松虫」は急遽河村晴久師の代理で林宗一郎師が舞われたもの。この演目のキリ部は特に好きなものなので、思わず膝を乗り出して聞いてしまった。パタパタと袖を打ち払う箇所が特に素敵だった。

三つ目の仕舞、「楊貴妃」も素敵だった。かなり謡も所作も抑えた表現のもので、舞い手はかなり緊張を強いられると思うが、河村和貴は難なくクリア。楊貴妃の美しさが匂いでる舞だった。

素謡の『松風』。フル能で何度か見ているけれど、今回のものは素謡にもかかわらず松風の情念が伝わるものだった。シテをされた味方團師はそれを見事に表現されていた。私がとくに心を打たれたのはシテツレの田茂井廣道師の謡。あくまでも姉を立てつつ、姉(そして己)が陥ってしまった恋慕の闇の虚しさを立体的に描かれて秀逸だった。

今年最後、12月の「すはま会」は京都観世会館で開催されるとのこと。喜びの歓声?があがっていた。河村能楽舞台は格式ある舞台なのだけれど、観客席のほとんどがマス席なので、数時間座った姿勢で見るのはかなりきつい。京都観世会館なら、ゆったりと椅子席で見ることができるからの歓声だろう。

それにしても林宗一郎師がこういう能の普及活動に熱心に尽力されているのに頭がさがる。今年は中止になってしまったけれど、「面白能楽館」といった試みも他地域ではあまりないものだと思う。お若い分、危機感を強くおもちなのだろう。それを実際に公演として実行、実践されるのはさすがである。

それと、YouTubeでもこの公演は配信されるということだった。取り仕切っておられたのは、「noh松」でおなじみの松野浩行師。一階席下座でマックを操作しておられた。この「noh松」は能に親しむにはとても良い視点で配信されていて、いつも「へぇー、実際はこうなんだ」と納得するところが多々ある。能に馴染みのない人にも親切な動画で、楽しく拝見させていただいている。