「奇想天外!お伊勢参りなのにラスベガス!?」が副題のこの作品、2016年8月に歌舞伎座で観て以来、すっかりファンになった。CM写真が以下。それにしてもたった4年前なのに、幸四郎、猿之助共に若い!
シネマ歌舞伎になったのも観ている。その歌舞伎座公演のレポが以下である。二つに分けている。
抱腹絶倒の喜劇、「ここまでやるか?!」と衝撃を受けた。さすが染五郎(当時)と猿之助、感心しきりだった。ぶっ飛んでいるようでしっかりと基本が抑えられている。原作の十返舎一九の諧謔精神を余すところなく具現化した舞台だった。この後原作を読んだのだけれど、歌舞伎の方がずっと面白かった!
歌舞伎舞台での公開は、ちょうど4年前の都知事選の真最中。何しろ舛添氏が領収書、経費の不正で知事退陣に追い込まれていたという、ホットな社会ネタをそのまま採り込むという快挙(暴挙)を平然とやってのけたのは、ひたすらアッパレ。そもそも、江戸の戯作(もちろん歌舞伎も)は世相を、日々の下世話な事件を、容赦なく作品化、舞台化していたんですから、この「弥次喜多」の挑戦もその伝統に乗っかったものです。ただ、4年前の「事件」を覚えている人が少なかったのか、この日の映画館における観客の反応は今ひとつだった。
市井の事件をそのまま読本(ヨミホン)に、あるいは歌舞伎や浄瑠璃の舞台にする。近松も市中の心中事件を舞台化した。西鶴も然り。もちろん「弥次喜多」原作を書いた十返舎一九もその作品に世相を散りばめたことだろう。だから、この歌舞伎版「弥次喜多」は、先祖の諧謔精神の正統な継承者ということになる。
市井の事件の「報告」をするのが、読売屋文春(市川弘太郎)なのがイイ。弘太郎はこの「弥次喜多」シリーズではずっとこの役。実にピッタリ!群衆を煽るサマが実に板についている。
この出端の歌舞伎の「吉野山」のシーンは、翌年のシリーズ第二弾『東海道中膝栗毛歌舞伎座捕物帖』でも使われていた。ただしそこではなんと静役は竹三郎、狐忠信役は寿猿で、大ケッサクだった!この作品、2017年の公開時に見逃してしまい、2018年後悔のシネマ歌舞伎で見る羽目に。あまりに面白くて、2回観てしまった。記事にしています。
さて配役、アップしておきます。
十返舎一九 原作より
杉原邦生 構成
戸部和久 脚本
市川猿之助 演出東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)
弥次郎兵衛
宙乗り相勤め申し候<配役>
弥次郎兵衛 染五郎
劇場支配人出飛人/
奉行大岡伊勢守忠相 獅童
盗賊白井髭左衛門 市川右近
天照大神 笑也
十六夜 壱太郎
茶屋女お稲
実は三ツ大お新 新悟
五日月屋番頭藤六 廣太郎
梵太郎 金太郎
政之助 團子
読売屋文春 弘太郎
老船頭寿吉 寿猿
家主七郎兵衛 錦吾
役者/女札親師毬夜 春猿
石油王夫人麗紅花 笑三郎
役者/用人山田重右衛門 猿弥
闇金利太郎 亀蔵
アラブの石油王亜剌比亜太門之助
五日月屋女房お綺羅 高麗蔵
女房お米 竹三郎
喜多八 猿之助