yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

三浦春馬さんの訃報は、本当につらい

衝撃だった。まだ30歳ですよ!

この方を見たのはたった一度、『ゲキ×シネ』連作の一つ、『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックIII』中で、これは2013年の「劇団☆新感線」舞台のシネマ版(@東劇2015年12月26日)だった。他の「有名」役者を圧倒して、三浦春馬さんの才能が光っていた。当ブログに感想を書いている。

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三浦春馬さんについては感心至極だった!

『髑髏城』では小栗旬、森山未來、早乙女太一の演技(とくにエロキューション)と殺陣にうんざりだったので、いわゆるタレント上がりの三浦春馬にはまったく期待していなかったのに、みごとにいい意味での肩透かし。声も演技もそしてダンスもよかった。そして殺陣はそれにもまして良かった。彼とのラブシーン(?)を演じた蒼井優も初々しくて素敵だった。古田新太を芝居で観たのは初めてだったけど、さすがと感心しきりだった。 

改めて彼の舞台作品をWiki で確認すると、すべてが高い基準で選ばれた作品であることがわかる。先ほどの劇団☆新感線の『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロック III』(2012年12月- 2013年2月) の後の舞台作品が以下。

『地獄のオルフェウス』テネシー・ウィリアムズ作 (2015年5月- 6月)

『キンキーブーツ』ハーヴェイ・ファイアスタイン作 (2016年7月- 8月)

『罪と罰』ドストエフスキー作 (2019年1月- 2月)

ミュージカル作品

『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド〜汚れなき瞳〜』(2020年3月)

『The Illusionist-イリュージョニスト-』(2020年12月~2021年1月、日生劇場)

すべて主演である。演出家が彼を高く評価し、抜擢したのがわかる。ほとんどがYouTubeでCM公開されているけれど、興味深かったのがあの『トーチソング・トリロジー』のハーヴェイ・ファイアスタイン作、『キンキーブーツ』だった。彼のことは当ブログにも以前に書いている。ひところハーヴェイ・ファイアスタインに「はまって」いたので。三浦春馬さんは『キンキーブーツ』では主人公のドラァグクイーン(drag queen)を演じている。YouTubeにそのゲネプロがほんの数分だけれどアップされている。

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すごい迫力。ここまで完璧に日本人役者が演じるとは!徹底した役柄研究の上に成立した演技であることは一目瞭然。これを見逃したのは実に残念だった。

Wikiで彼の演技歴を見ていて気になったことが。それは、カズオ・イシグロの小説『私を離さないで』をテレビ版にした作品(放映:2016年1月15日 - 3月18日、TBS)で、彼が原作のトミーに当たる土井友彦を演じたこと。繊細で真面目な三浦春馬さん、おそらく死の問題(生の不条理性)について深く考えさせられたに違いない。この作品の映画版もテレビ版も、見ないで良かったと心から思う。きっと苦しくてたまらず、中途放棄しただろうから。原作(Never Let Me Go)を読んだときも本当に辛かった。一応最後まで読んだことは読んだのだけれど。当ブログ記事(2011年4月21日)にしている。その後、二回もブログ記事にしているけれど、それぞれ長いのが書けなかったのは、辛かったから。これを役柄とはいえ演じるとなると、役者の精神的負担は測り知れないだろう。後のケアはできていたのだろうか。

『キンキーブーツ』もそうなのだけれど、生きてゆくのが辛い自分をなんとかなだめながら生きている繊細な人の話である。『地獄のオルフェウス』も『罪と罰』もしかり。そういう場合、演じる役者は役柄にシンクロしてしまう可能性というか陥穽があるだろう。「役者の業」とでも言おうか。だからこそ、役者は「god」になるんですけどね。しかし、そのために払う代償はどれほど大きいことか!だから、彼は他の役者を誹謗中傷するお気楽な外野が許せなかったのかもしれない。

どういう理由にせよ、三浦春馬という非凡な才能のある役者が自ら命を絶ったという事実は厳然としてある。とてつもなく重い事実ではある。だから、「ご冥福をお祈りします」とはとても言えない。できれば化けて出て、恨みの一つでも吐露して欲しい。