TTR公演を見たのは昨年の7月の湊川神社神能殿での公演以来。その時のフル能が『善界』というかなり退屈なもので、かなりがっかりした。ただ、片山九郎右衛門師の舞囃子「井筒」の素晴らしさがそれを補ってあまりあった。記事にしているので、リンクしておく。
TTR主催公演では必ず山本哲也師と谷口達志師の鼎談がつくのだけれど、とても興味深い、というかけっさくなことが多い。普段聞けない楽屋オチや有名能楽師のくせ(?)とかを、話される。それがとても面白かった。その時は九郎右衛門師のお父上、故片山幽雪師のお話がとてもおかしかった。一度も舞台を拝見したことがなかったけれど、非常に親しみを(勝手に)感じてしまった。
今回の鼎談では、無観客でやる緊張感とそれに舞台が恋しい思いを、お二人がダイレクトに語られた。さらに、哲也師が二人を代表して語られた抱負は、「今は我慢をしつつ、再演できるときに最高の舞台を務められるように、しっかりと準備します」だった。
戦中戦後に能楽師の方々が能公演ができないとき、しっかりとお稽古された結果が、現在の優れた能舞台が可能になることにつながっているという話は、とくに印象的だった。とくに戦後すぐの能楽師の方達の苦労は、並大抵ではなかったことを書いた本も何冊か読んでいるので、今のこの苦境と思い合せて、ズシンと胸にきた。
観客サイドからは、一日も早い再開が望まれるところである。それと、こういうライブ公演を決行されたのはさすがである。視聴料をとって、ぜひやっていただきたいと心から願っている。