友人からとても良かったと伝え聞いた今年の「平安神宮薪能」、2年前に初めて参加した折、あまりにもの混雑と暑さだったので去年、今年は断念していた。録画をみて、かなり後悔している。
以下にチラシの表裏を。
画面からもすばらしい薪能だったのが伝わってきた。見損ねて、無念!
開演前、京都観世会理事長の井上裕久師へのインタビューがあり、内容がとても興味深かった。日経の記事(2019/5/31 7:01)にそれが掲載されていた。
この記事担当者は日経の小国由美子記者。今までに出くわした朝日等の要領を得ないしかも無知丸出しの能楽公演解説の中では出色だった。非常にわかりやすく、要点もしっかり伝わってくる。何よりも文章が簡潔で明瞭。
また副音声で付く薪能の解説は灘高等学校教諭の中嶋謙昌氏だとのこと。残念ながら私が録画したものでは、これが聞けなかった。昨年灘高で開催された「第30回能楽フォーラム」での中嶋謙昌氏の基調講演「『外地公演とは何だったのか』——中国東北部(旧満州)の事例を中心に——」が非常に興味深いものであったことを思い出した。
だからこの薪能の副音声解説が聴けなかったのが口惜しい。
日経の小国由美子記者の薪能の紹介文を以下に引用させていただく。
1日目の初番は、観世流の「平安」。大正天皇の即位式のために創られた「大典」を改作した曲だ。1961年の初演以来、平安神宮で3回上演されたが、76年を最後に上演が途絶えていた。京都薪能を主催する京都能楽会の井上裕久理事長は「今回は70回記念と天皇の代替わりが重なり、いい機会になった」と話す。
(中略)
京都薪能の魅力は、平安神宮の朱塗りの太極殿を背景に、夕暮れのなか、薪のあかりに照らされた能舞台の幻想的な美しさだ。「日本でいちばん美しいとも言われる薪能」(井上理事長)というのもうなずける。能楽堂などでの公演と違って、開放的な雰囲気のなか、くつろいで見られるのも、初心者にはありがたい。
第1回の開催は戦後間もない50年。まだ物資の乏しい時代で、舞台設備も十分に整わなかったが「もう一度世の中に能楽を普及するきっかけにしたいと、流派を超えた能楽師が団結した」(井上理事長)。以来70年間、超流派の能楽師が「手弁当で」続けてきた。2018年には京都市の年中行事にも認定され、地元の風物詩として定着している。だが、近年は客足が伸び悩んでいるのが課題だ。
■客層開拓に課題
最盛期には2日間の開催で1万人超が来場することもあったが、ここ数年は1日あたり1500~1600人程度。特設舞台の場所が変わったことで客席スペースが狭くなったという事情もあるが、「若い人が能に親しむ機会が減り、従来の愛好者は高齢化している」(井上理事長)。
新たな観客を取り込もうと、15年からは5月に京都駅前地下街などで無料の「プレ公演」を開催。16年にロームシアター京都が開場してからは、雨天時の会場として確保するほか、薪能の来場者向けに無料の公開講座を開いている。「100回まで続くよう、今我々がしっかりと土壌をつくらなくては」という願いを込めた公演になりそうだ。
私が今年参加するのを諦めたのは、やはり暑いから。6月の午後6時の日はまだ高く、とにかく暑い。人も多い上に前が見づらい。なんて、次元の低いことで敬遠してしまった。録画で見る限り、一昨年よりも人が少ないように感じた。確かに記事にあるように「近年は客足が伸び悩んでいる」のだろう。もったいない。京都の人こそ、足を運んで欲しい。京都の観世、金剛は今見ておかないと悔いが残りますよ(行かなかった私がいうのもナンですが)。
プログラムを見渡してみると、「御代代わり」を寿ぐという趣旨が徹底していて、力の入れ方もより強いように思う。見逃してしまったのが、改めて悔やまれます。