yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

恐ろしくあり楽しくもあり「面白能楽館 恐怖の館~のがすまじきぞ~」新企画@京都観世会館 7月27日

毎年この時期に開催されている「面白能楽館」。参加するのは初めてだったけれど、今まで知らなかったのが残念。主催能楽師の方々の能を広めたいという強い想いがひしひしと伝わる企画だった。さまざまな年代の観客を、飽きさせないでとことん楽しませる工夫に満ちていた。

夏休みの企画ということもあり、子供たちが(もちろん大人も)能に興味を持つように色々な試みがされていた。アイデアはおそらく若手の方々が主になって出されたのだろう。とても熱い内容になっていた。それも、「京都観世会」総力をあげての参加という贅沢。見逃した人はお気の毒ではある。

最初にお話をされたのは林宗一郎師。おそらく彼が主企画者だと思う。とても懇切丁寧な解説で、見る前から期待が膨らむ。あらかじめ「組曲」に組み込まれた曲の解説があり、なぜこれらが「恐怖」をかきたてるのか、その説明もあった。

『鉄輪』は裏切った男への女の嫉妬の執念が、『善知鳥』は地獄に堕ちても殺生した鳥に責め続けられる猟師の苦しみが、『恋重荷』では身分違いの恋をからかわれた末に自死した老人の恨みが描かれている。それぞれが置かれているのは救いようのない地獄絵図であるのだけれど、『善知鳥』以外は一応ある種の「救い」がもたらされる。とはいうものの、それでもやはり一番恐ろしいのは、彼らが自身への怒りや自責からは自由になっていないところである。「逃すまじきぞ!」というのはそれかもしれない。

こんな内容はおそらく子供には難解すぎるだろうけど、それでもきっと舞い手の能楽師の方々の気迫のこもった舞に、それぞれの曲のもつ重みや深さは感じ取ったと思う。子供の心は素直だから。もはや素直ではなくなった大人にも、それぞれの人生の一コマと重なるものがあったはず。より一層、ギリギリと苛まれるシテの苦しみを共有できたはず? 

この企画で最も感動したのは、「舞」にそれぞれお囃子が付き、しかもシテは装束を着て登場したところ。なんという大判振る舞い!これで、能がboringだと思っていた人は、度肝を抜かれ、圧倒されたに違いない。なんと素敵な企画!しかも、しかも、演者の方々はベテランのすばらしいシテ方、お囃子方のみなさん。こんな贅沢が許されていいんだろうか。ずっと見ていたかった。

 

演者の方々は以下。

シテ

鉄 輪   浦田保浩
善知鳥   杉浦豊彦
恋重荷   井上裕久

 

笛     左鴻泰弘

小鼓    曽和鼓堂

大鼓    河村大

太鼓    前川光範

 

後見    味方團

 

地謡    大江信行 越賀隆之 浦田保親 吉浪壽晃

この日のチラシは以下。とてもヴィジュアルかつ親切なものだった。

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満員の盛況だった。そして能面体験、能装束体験も結構希望者が並んでいたし、「ホラールーム」なるお化け屋敷にも人が詰めかけていた。試せばよかった。次にこういう企画があれば是非参加したい。

実体験に勝るものはないので、親御さん、教師の方々も参加されることを強くお薦めします。