yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

羽生結弦選手の純な魂が光として放射していた現場「ファンタジー・オン・アイス 2019 幕張」@幕張メッセ 5月27日

最初の手を広げてしゃがんだポース。仏像のよう。美しい面差しに美しい身体。そしてそれを愛でるかのようなガラス玉の散りばめられた白いオーガンジーの上着。煌びやかなのに清楚。まさに羽生結弦という人そのもの。今までの衣装の中で最も羽生結弦という人の「人となり」を表わしているように感じた。

羽生結弦選手の佇まい。純な魂が光として放射している。まるで発光体。これを目にして心が震えない人なんているのだろうか。放射される光を浴びたいと、切に願ってしまう。「素敵!」なんて陳腐な表現を許さない、そういう極め付けの尊さがある。 

同じ人間とは思えないほど美しい人が、立ち上がり、舞い始める。“Open your eyes wide  Listen to your heart”では愛おしむような腕と手の動き。次の “The spirit was broken into pieces in the distant past” ではより明瞭に包み込むような所作が入る。よりアグレッシブな転調のたびに“Crystal memories”が挿入され、スケーティングを一つのドラマへと盛り上げて行く。そこに、なにものにも侵されない羽生ワールドが展開する。 

そして、“Crystal memories” が最初に導入されるフレーズが終わるところで転換がある。それまでのためらいがちな自身を「認める」[assure]する気持ちが、よりアグレッシヴなものへと切り替わるのだ。

そこからはまるで「序の舞」。想いの丈をぶつける舞が出現する。ジャンプが入り、気持ちの高揚が示される。スピンもステップもより大きな大胆なものへと転換する。大胆でいて、優しい。どこまでも優雅。ただ、ピッチが上がるので、強さが増している。その強さは最終章で全開。まるで憑かれたかのように舞い狂う羽生結弦選手。再度挿入される “Crystal memories”がそれを煽る。煽られてより激しく想いの丈をぶつける羽生結弦選手。

それもやがて「鎮静」し、舞台中央では締めの立ちスピンを美しく決める羽生選手が佇んでいる。そして最後の挨拶。所作一つ一つが美しく、心を打つ。魂に響いてくる。なんという人なんだろうか、羽生結弦という人は!

 

その想いに共振した観客の反応が「すごい!」の一言。私もその場にいたら、失神していたかもしれない。おそらく魂を抜かれた状態になっていたと思う。ブザマなサマを人様に見られなくて良かった!

 今回のFOIのプログラムが羽生結弦選手のプログラム曲として固定するのかどうかは、知らない。でもこの2曲だけでも、彼は新境地を拓いたのだと思う。表象する世界が異なる二つの曲。でも「繊細な魂の叫び」を歌に託している点では共通している。これは競技用というより、芸術表現として相応しいものなのかもしれない。フィギュア・スケートをこの境地、つまり芸術のレベルまでアップグレードしたのは、おそらく羽生結弦さんだけだと思う。だからこそ、何があってもその美しい舞を魅せ続けて欲しいと切望している。他に誰がいますか?