yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

林宗一郎師の舞囃子「逆矛(さかほこ)」in 「第九回 和のしらべ 武家の式楽 宮中の式楽」@湊川神社神能殿 3月2日

 

演者一覧

当日の演者一覧は以下。

シテ  林宗一郎

大鼓  辻芳昭

小鼓  久田舜一郎

太鼓  上田悟

笛   斉藤敦

地謡  笠田祐樹  上田大介  吉井基晴  林本大

能『逆矛』はどんな能?

「逆矛」について耳にするのは初めて。なんとなく「天逆鉾」のことかと想像していたら、やはりそうだった。「天逆鉾」とは記紀神話に登場する矛で、イザナギ、イザナミの夫婦神が、漂流していた大地に突き立てて「国産み」をしたとされる矛である。能『逆矛』はこれを元にした能作品。野上豊一郎著『謡曲 逆矛 解註謡曲全集 』の中にある『逆矛』解説(via amazon.co.jp)が以下。

「逆矛」は世阿弥または宮増の作と伝わる夢幻能。紅葉の名所竜田山を訪れた旅人の前に、老翁(実は滝祭の神)が現われ、イザナギ・イザナミによる国土創成神話を語り聞かせます。 

国産みの矛、どんなのか皆目見当もつかなかったけれど、この日の舞台では先に矛がついた長い棒が用意されていた。舞の途中にこの矛を持って大地を掻き回す所作が入る。 

林宗一郎師シテの舞囃子

『逆矛』をフルで見ていないので、林宗一郎師が舞われたのがどの部分かわからないけれど、掻き回す所作が入っていたので、クライマックス部だと思われる。矛を振り上げ、降ろし、そしてかき混ぜる。キリッと振り上げ、降ろす。グッと神混ぜる。この繋がり、豪快なのにコントロールが効いた動き。一連のこの動きに、並々ならないエネルギーの凝縮、そして解放が込められていて、矛での国産みが聖なる力の表象であることが理解できる。襟をただして見てしまった。 

矛を舞台に置いてからの舞は解放感に溢れたもの。でもそれも単にウキウキと舞うというのではない。神が国産みという重大な務めを終えた後の喜びを表現。一挙手一投足に強靭なパワーが満ちていた。それも、力で押し切るというのではなく、非常に端正。宗一郎師の動きはどこまでも端正。力を完璧にコントロールした端正さ。柱前でくるりと回る動きの美しさ。そこからスーッと舞台中央に向かって進む動きの見事さ。力と清廉とが対になって、神の威厳が表現されていた。

京都薪能での半能「逆矛」

「平成27年 第66回 ―平安神宮御創建120周年記念 神々の想い 祈りの風―」での田茂井廣道シテの半能「逆矛」の写真を「京都薪能」のサイトからお借りする。

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