はてさて、27年前の『伽羅先代萩」の舞台は現在のものと同じなのか、それとも違っているのか。興味深い発見がいくつかあった。
記録映画『伽羅先代萩」
人形
政岡 吉田文雀
千松 吉田幸助
鶴千代君 吉田玉佳
八汐 吉田文吾(五代)
沖の井 吉田清之助
栄御前 桐竹一暢
松ヶ枝節之助 吉田玉女
貝田勘解由 吉田玉幸
浄瑠璃・三味線
<御殿の段>
浄瑠璃 豊竹嶋大夫(八代)、
三味線 鶴澤清介
<政岡忠義の段>
浄瑠璃 豊竹咲大夫
三味線 鶴澤清友
<床下の段>
浄瑠璃 竹本津梅大夫
三味線 鶴澤清太郎過去の演者と今の演者
過去の演者と現在の演者
政岡を遣われた文雀さん、八汐を遣われた吉田文吾さんはすでに故人。お二人を映像で見ると、懐かしく、そして悲しい。文雀さんは理論家として知られていた方。理知的な政岡にぴったり。極めて緻密な計算の許に、浄瑠璃・三味線に合わせておられた。文吾さんも理知的な方。敵役を遣われることが多かった印象で、この八汐も大仰な遣いでなく憎たらしさを出しておられた。玉女さんは現玉男さん。剛毅な武士、松ヶ枝節之助を遣われていたのだけれど、お師匠の玉男さんが被さって見えた。
現在の演じ方
嶋大夫さん(「太夫」でなく)、清介さんはご健在。清介さんはこの1月の文楽公演、『壇浦兜軍記』、「阿古屋琴責」の三味線で拝聴したばかり。お元気で嬉しい。嶋大夫さんもお元気だとか。「御殿の段」でのお二人の掛け合いは、「いかにも!」という感じで、思わず手を打ってしまった。記憶に残影として残っているものを確認したと同時に、記憶の曖昧さにも気づかされた。先日の千歳太夫・富助さんの「御殿の段」での演奏とはギャップがあった。どちらも素敵だったのだけれど、先日の方がやはりモダンな感じ。古典芸能といえども、時代、演者によって、さらには観客によって変わるものだと納得させられた。
「政岡忠義の段」にもそれは言えた。咲大夫さんは現在と違いかなりふっくらしておられたし、浄瑠璃にも力があった。ただ、この1月の浄瑠璃を担当された織太夫さんの勢いの良さに比べると、老練な感じ。織太夫さんは「時代の子」なんですよね。パワーが半端ない。
色々な思いがどっと押し寄せてくる記録映画鑑賞だった。