yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

第148回文楽公演『八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)』@国立文楽劇場11月6日昼の部

チラシ表がこの演目のもの。

構成は以下。

  浪花入江の段
  主計之介早討の段
  正清本城の段

演者一覧は以下のチラシをご覧あれ。また、概要はその下にアップしておいた。

初めて見る狂言。多分歌舞伎でも見ていない。時代物でもあまり人口に膾炙していない芝居なのかも。ということで検索をかけた。その結果のWiki解説。

浄瑠璃、十一段、時代物。中村魚岸・佐川藤太合作。文化四年(1807)豊竹座。 加藤清正の忠誠を主として、清正が二条城で毒酒を飲まされ、熊本の本城に帰って、豊臣家を案じつつ死去するという物語を脚色したもの。四段目の「御座船」と八段目の「本城」が今日上演される。 小田の幼君を守って孤忠を尽す佐藤正清(清正)は、二条城で時政(家康)に毒酒をすすめられ、森三左衛門の義心に感じて盃を取る。自分の命数を知った正清は本城へ籠り、主家の運命を歎く。一子主計之助の新妻雛衣は、森三左衛門の娘という理由から離縁されたので、夫に操を立てて自害して果てる。正清は児島政次(後藤又兵衛)、佐々木高綱(真田幸村)の二人の軍師を味方に得て、幼君を彼等に托して安らかな死をとげる。

あらかじめ調べておくべきだった。というのも観劇中、時代背景、人物関係がよくわからず、せっかくの豪快な人形、太夫の活躍ぶりへの感情移入が殺がれたから。残念。でも太夫さんの活躍は楽しかった。本当に活躍というのがぴったりのいきいきした舞台だった。

なが〜いお話をたった三段に「まとめて」いるため、全体の構図も構成もぼやっとした中で、必死でついてゆかざるを得ない。かなり苦労した。それにしても、ハイライト部がしっかりと選ばれているのに今更ながら感心。

「浪花入江の段」では正清の豪快さが前面に出される。毒を盛られながらも、それを気取られないように振る舞う正清の英雄ぶり。それを靖太夫さんが力強く演じた。最後の豪快な笑いがすばらしかった。気が充満していた。

次の段は正清の豪快な哄笑の余韻の中で始まる。咲甫太夫さんと三味線、清友さんの組み合わせ。咲甫さん、前段の靖太夫さんの「活躍」を受けて、こちらも豪快さを思う存分アピール。笑いの豪快さも勝るとも劣らず。おかしくて、吹いてしまった。きっと大阪のご出身だろうと推測したら、まさにその通り。ぬかっていたのだけれど、なんと来年1月に織太夫をご襲名とか。織太夫さんといえば、師匠の咲太夫さんのお父上。織太夫さんはのちに綱太夫から源太夫になられたのだけど、一昨年鬼籍に入られた。咲太夫さんをとびこして、織太夫を継がれるということは、近々咲太夫さんは綱大夫になられるのかも。脱線失礼。「大阪もん」のユーモアセンスを存分におもちの新織太夫、大阪発祥の芸能である文楽を盛り上げるのに、一役も二役も買われるに違いない。

「正清本城の段」は太夫、呂太夫さんに三味線、清介さん。起伏に富んだこの場面をそつなくこなされた。呂太夫さんは英太夫の時もその美声が素敵だったけど、それに渋みが加わっていた。この段での人形は若手が多く登用されていたのが印象的。私は以前から一輔さんが好きなんだけれど、他の方々もぞれぞれ個性的で、そのぶつかり合いが楽しかった。

今回の公演、舞台が始まった途端に華やぎがグッと来た。勢いも今まで以上に感じられた。客席も平日の昼間だというのに、ほぼ満席。舞台の演者さんたちと客席とが呼応し合っているような感じ。そこに身を置けてうれしかった。