yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

川上貞奴と音次郎の伝記

川上貞奴を次のテーマのひとつにしようと考えて、近所の図書館で関連書を探したら、わずか五冊のみだった。そのすべてが1984、、1985年出版である。どうもNHKの大河ドラマになること(「春の波濤」1985年)をみこんでの出版だったのかもしれない。

江崎惇著 『実録 川上貞奴 世界を翔けた炎の女』新人物往来社 1985年

佐竹申伍著 『貞奴 炎の生涯』 光風社出版 1984年
川上 音次郎、川上貞奴著 「自伝音次郎・貞奴」 三一書房 1984年

一条明著 『女優一代・貞奴』日本文華社 1984年

杉本苑子著 『マダム貞奴』 読売新聞社 1984年

この五冊、表紙がかなり際ものぽくて、電車の中で読むにはちょっと気恥ずかしい。内容についても、小説、伝記ともにソープオペラ風に仕立ててある。というのは、読者にそれを好む女性を想定していたからだろう。でも中身そのものはそういう際ものではなく、きわめて真摯なものだった。

上の小説、伝記の種本は三番目に挙げた音次郎、貞奴による自伝で、こちらの内容は期待を裏切って(?)「際もの」とはおよそ違っていた。これが想像以上にというか、もう読み出したらやめられないほどの面白さ、まるで冒険小説である。実際にあった話とは到底思えないほどの、わくわくする出来事に満ちている。音次郎と貞奴がそれぞれに補足する形で自分たちの「漫遊記」、「珍道中」を語っているのだが、彼らがほらを吹いているのではないかと疑いたくなるほどのシンデレラ物語でもある。私はいっぺんに二人のファンになった。日本からこんなにパワーのある役者が出たのだ。日本ではなく海外で高く評価されたのも驚きだが、それ以上にあの時代に渡航するという彼らの勇気に感銘を受けた。こういう人がまだ明治期にはいたということだろう。「ちまちまと」まとまってしまっている現代人とはまるで同じ日本人とは思えない。進取の気性に富んだ、怖れを知らない冒険家が当時演劇界にいたのだ。そして旧態依然たる歌舞伎等の旧劇に挑戦状を突きつけているのだ。それだけでも感涙ものである。
いちおう全部に目を通したが、もう一度貞奴、音次郎の伝記に立ち返って、事実関係をしっかりと調べ、その上で彼らの業績を明らかにしたい。

それにしても、とにかくすごいパワー。彼らのパワ―に感応した海外の人たちは、大いに気に入ったのである。