yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

パリ・・オペラ座バレエシネマ『シンデレラ』@神戸国際松竹 12月28日

YouTubeにパリ発の動画が上がっていて、2時間超えの公演が鑑賞可能である。おそらく期限があるだろうけれど、リンクしておく。私も気になった場面を見直した。

www.youtube.com

よく知られたペロー作の童話『シンデレラ』にプロコフィエフが曲をつけた。それをルドルフ・ヌレエフが振付け、ハリウッドを舞台にした「スター誕生物語」にしている。俗化を施したといえるかも。面白い趣向ではあるけれど、この設定を知らないと「?」と戸惑ってしまうかもしれない。私も映画館でチラシをもらってやっとその背景がわかったほど。

こういう設定に果たして意味があるのだろうかと、少し疑問を持った。この物語自体が多彩な、複雑な解釈を許す作品ではあるけれど、世俗の話になっているので、アレゴリー的な要素が排されている。あれこれと解釈をするのをかわしている。多くの童話はアレゴリーであり、私個人としてはどうしても精神分析学的解釈を施してしまうから、『白鳥の湖』のような古典作品の方が好きではあるけれど。ヌレエフは設定を「俗化」させることで、一種のファースというか笑劇にする意図があったのかもしれない。

作品解説はSPICEのものが非常に詳しい。リンクしておく。

spice.eplus.jp

また別の解説としてはFASHION PRESSがある。そこから一部引用させていただく。

www.fashion-press.net

FASHION PRESSの「解説」。

主人公・シンデレラは女優に憧れる少女、王子はスター俳優、仙女はプロデューサーという設定で、劇中には『キングコング』や『ジークフリート・フォリーズ』などハリウッド黄金期に誕生した名作映画へのオマージュも登場する。今回は、カール・パケットの引退公演としても注目を浴びた2018年上演の『シンデレラ』を上映。森英恵が担当した美しい衣装にも注目だ。

作品情報は以下。

『シンデレラ』
パリ・オペラ座での上演日:2018年12月31日
場所:パリ・オペラ座 バスティーユ
上映時間:2時間30分 構成:3幕


振付:ルドルフ・ヌレエフ 

原振付:シャルル・ペロー
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 

指揮者:ヴェロ・パーン
舞台美術:パトリカ・イオネスコ 

衣装:森英恵 

照明:グィード・レヴィ
オーケストラ:コンセール・パドルー
芸術監督:オーレリ・デュポン


キャスト

シンデレラ: ヴァランティーヌ・コラサント

映画スター: カール・パケット

姉妹: ドロテ・ジルベール

姉妹: リュドミラ・パリエロ

継母: オーレリアン・ウエット

プロデューサー : アレッシオ・カルボーネ

 

その他、エトワール、プルミエール・ダンスール、パリ・オペラ座バレエ団員

そうか、芸術監督はオーレリ・デュポンだったのですね。ミルピエが退出して後に芸術監督になったばかりのデュポン。かなり力を入れての作品だったはず。そういえばこの公演で引退するカール・パケットは、以前にみた映画「ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男」では確かミルピエと確執があったことがほのめかされていたっけ。

カール・パケット[Karl Paquette]を見た最初はシネマ版『白鳥の湖』でのロットバルト役として。記事にしている

その次は2013年東京文化会館での『天井桟敷の人々』、さらに、2017年の東京文化会館での「グラン・ガラ」でのもの。非常に力強いダンサー、しかも表現力がずば抜けている。この『シンデレラ』でも40代なのに、それとは思えないほどの跳躍に加えて絶妙のコメディタッチも魅せてくれた。ちょっと癖のある風貌は古典バレエの「王子様」風味ではなく、ハリウッド・スターに扮した方がピタリと収まるかも知れない。強い自我に加えて自身の解釈をはっきりと打ち出すところが、ミルピエとソリが合わなかった原因かも知れない。

ヴァランティーヌ・コラサントは華奢というよりは、しっかりとした体躯で、パケットとパワーでは釣り合いが取れていた。パリ・オペラ座の雰囲気とは少しずれている。以前に『カルメン』、『ドン・キホーテ』を踊ったと読み、納得した。もちろんエトワール。

印象的だったのは継母役のオーレリアン・ウエット。いやみったらしさの全開がすごい。また継姉役のドロテ・ジルベールとリュドミラ・パリエロのダンスは「瞬間止め」演技が完璧に決まっていて、舌を巻いた。もちろん二人ともエトワール。

「撮影スタジオ」の設定ではハリウッド作品を思わせるポスター等が多く登場、ただし私がわかったのはチャップリンの『キッド』のみ。雰囲気はなんとなくわかったものの、少々つまらなかった。ハリウッドがさほど好きではないから。

それにしてもパリ・オペラ座のダンサー層の厚いこと!こんなにもすばらしい踊り手が50人もいるなんで、信じられません。眼福でした。