yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「高嶋館・竹藪」と「土佐将監閑居」(通称「吃又」)二幕の『傾城反魂香』in 「三月大歌舞伎」@歌舞伎座 3月8日昼の部

 

「配役」と「みどころ」

以下、「歌舞伎美人」から拝借した「配役」、「みどころ」。

高嶋館・竹藪〉







〈土佐将監閑居〉


狩野四郎二郎元信
不破入道道犬
銀杏の前
長谷部雲谷
不破伴左衛門
宮内卿の局
狩野雅楽之助

浮世又平後に土佐又平光起
女房おとく
土佐修理之助
百姓庄右衛門
将監北の方
土佐将監光信
狩野雅楽之助


幸四郎
猿弥
米吉
松之助
廣太郎
笑三郎 
鴈治郎

白鸚
猿之助
高麗蔵
寿猿
門之助
彌十郎
鴈治郎

 

奇跡を起こす絵筆の勢い

 近江の六角家、高嶋館に召し出された絵師の狩野元信は、御家乗っ取りを企む家老不破道犬の悪計によりしばり付けられます。窮地に立たされた元信が自らの肩先をくい裂き、襖に血を吹きかけて虎を描くと、絵から虎が抜け出てきて難を逃れます。一方、館の外では六角家の息女銀杏の前を守護するために、弟子の雅楽之助が駆けつけます。〈高嶋館・竹藪〉
 山科の里、師匠である土佐将監の館へ、絵師の又平と女房おとくが訪れます。土佐の名字を授かりたいと願い出ますが、言葉が不自由な又平に代わり、口達者なおとくが懇願するも聞き入れられません。絶望した又平は今生の名残に、手水鉢を石塔と定め自画像を描くのですが…。〈土佐将監閑居〉
 絵師が起こす奇跡が鍵を握る、近松門左衛門の義太夫狂言の名作。又平とおとく夫婦の絆が描かれる、おなじみの「土佐将監閑居の場」に、前段となる二場を加えた上演をご堪能ください。

 珍しい序幕「高嶋館」の上演と頻繁に上演される「吃又」

近松門左衛門作で、元は1708年大坂竹本座初演の人形浄瑠璃。のちに歌舞伎に移入された。「筋書き」によると、序幕の「高嶋館」は、「近江大名六角家のお家騒動を軸にして、悪事を企む不破入道道犬、六角家の息女銀杏の前に横恋慕する長谷部雲谷が狩野元信失脚を目論む様子を描く」ものだという。さらに、「元信への銀杏の前の恋心を描くと共に、道犬らの一計に嵌められ捕らえられた元信が、自らの血潮を用いて虎の絵を描き、その虎が襖の中から抜け出る不思議を見せ」るという(「筋書き」15頁)。『傾城反魂香』でこの段は見たことがない。これと組み合わされた「土佐将監閑居」(通称「吃又」)に比べると演じらる頻度はぐんと少ないのだろう。これを見ることができて、儲けものをした感じがしている。

それに対して「吃又」は頻繁にかかるので、結構見ている。最近でもっとも感動したのは2017年の浅草花形歌舞伎での巳之助と壱太郎のコンビ。すばらしかった。

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巳之助と壱太郎の清新なカップルに比べると、白鸚・猿之助はソツがないぶん勢いも少なめ。白鸚は年齢もあるのだろうけど、「情」をたっぷり見せるにはいささかパワー不足。猿之助はそれに合わせたのだろう、こちらもいつものパワーに欠ける。かなり残念だった。

印象的だった役者たち

他の役者で印象的だったのは銀杏を演じた米吉。なんとも可愛い。ニンにピタリとハマり、そして演技もソツがない。いささか「優等生」すぎる感じ。でもあの可愛さですからね。「外れろ」というのが無理な注文。でも時折見せる所作にドキッとするような色気が。例えば、元信の膝にそっと手をおくところなど。エロティックな手の動きに、ちょっとドキドキしてしまった。

(米吉演じる)銀杏を狙う悪役の猿弥も負けていない。いやらしいのがおかしい。やはり猿翁の薫陶を受けた役者さんは、アピールの場面の分析ができているんでしょう。猿弥といえば笑三郎。笑三郎が演じた宮内卿の局御殿様は、ニンにぴったりで如何にもという感じ。品格のある女方役者のお手本です。

そうそう、もっとも功労のあったのが虎。これには異論は出ないと思う。前脚と後脚の連携プレー(?)は素敵だった。やんやの拍手喝采が起きていた。