yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

美貌のメゾ、クレモンティーヌ・マルゲーヌがすばらしい『カルメン』MET ライブビューイング(Season 2018-2019) @大阪ステーション・シティシネマ 3月10日

以下、オフィシャルサイトにアップされていた写真をお借りする。

 

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以下、METのオフシャルサイトからお借りした情報。

<スタッフ・キャスト>

指揮:

ルイ・ラングレ Louis Langrée

演出:

リチャード・エア Sir Richard Eyre

 

出演者

カルメン(メゾソプラノ):

   クレモンティーヌ・マルゲーヌClémentine Margaine

ドン・ホセ(テノール):    

   ロベルト・アラーニャRoberto Alagna

ミカエラ(ソプラノ):  

   アレクサンドラ・クルジャックAleksandra Kurzak

エスカミーリョ(バス):

   アレクサンダー・ヴィノグラドフAlexander Vinogradov

 

MET上演日:2019年2月2日

言語:フランス語

 

<あらすじ>

19世紀のスペイン、セヴィリャ。連隊の伍長ドン・ホセは、いずれ故郷に帰って幼なじみのミカエラと結婚する日を夢見ている。そんな彼の前に、自由奔放なジプシー女のカルメンが現れた。カルメンの手管に魅入られたホセは、けんか騒ぎを起こして捕らえられたカルメンを逃がし、営倉に送られる。出所したホセはカルメンと逢引し、彼女の仲間である密輸を働く無法者の一味に加わる。しかし間もなくカルメンの心は花形闘牛士に傾いてゆき・・・。

特筆すべきは、何といってもカルメン役のクレモンティーヌ・マルゲーヌの歌唱力と演技力だろう。圧巻のひとこと。ここまでのカルメンを見せられたら、後に続く歌手は大変だろうと思った。彼女は一歌手というより、カルメンそのものだった。カルメンのパッションが、熱くダイレクトにこちらの皮膚に伝わった。火傷しそうだった。激しく、それでいて繊細で、「カルメン」の化身だった。

メリメの原作では(私の記憶に間違いがなければ)カルメンは尻軽な浮気女。それ以上でも以下でもない、ある意味どこにでもいる女性。それがビゼーの手にかかるともっとヒダのある人格になる。これはビゼーというより、カルメン役のクレモンティーヌ・マルゲーヌと今回の舞台演出家のリチャード・エアの解釈なのかもしれない。カルメンの心理を屈折したものとして描いていた。単なる浮気女ではなかった。原作のカルメン像とは違っていた。

ドン・ホセに許嫁の元に帰るように言う時のカルメンの悲しげな眼差し。他の男に気持ちが移っていると言いながら、それはあくまでもドン・ホセを彼の故郷へ帰すためのもの。それがドン・ホセへに「道を踏み外させてしまった」カルメンなりの忠誠と愛情。それが痛いほど伝わってきた。マルゲーヌの演技力がすばらしい。

ドン・ホセ役のロベルト・アラーニャは、声質は素晴らしのだけれど、若く無鉄砲なドン・ホセを演じるにはいささか年をとりすぎている感じ。カルメン役のマルゲーヌとの釣り合いが最後まで取れていなかった。 

ドン・ホセの恋敵役の闘牛士エスカミーリョ役のアレクサンダー・ヴィノグラドフにも同じことがいえる。インテリ然としていて、荒々しさにかけている。また、年齢も中年で闘牛士には見えない。歌唱は素晴らしかったのだけれど、そこでつまずいてしまった。

ドン・ホセの許嫁のミカエラ役、アレクサンドラ・クルジャックはアラーニャのお連れ合いらしい。そのためか、かなりドメスティックな匂いがして、ちょっと辟易。綺麗なソプラノではあるものの、あまりにも平凡。あのマルゲーヌと「張り合う」には役不足感は否めない。エネルギーレベルがあまりにも違いすぎる。

というわけで、この『カルメン』の「成功」は一重にカルメンを演じたクレモンティーヌ・マルゲーヌのすごさに負っている。必見!

嬉しかったのは素晴らしいディーヴァに出会えたこと。もちろんクレモンティーヌ・マルゲーヌ!フランスのメゾソプラノ。美しいし、パワフル。もっと、もっと見たい!