yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

オペラ『カルメン』@プラハ国立劇場 3月19日

せっかく記事を書いたのに、編集しようとして前のものを消してしまった。こういうことを何度もやっているので、まずMSWordに打ち込んでからにしているのに、つい焦って「はてなサイト」にいきなり書きこんだ結果がこれである。

『カルメン』は国立オペラ劇場ではなく、国立劇場に乗った。オペラ劇場がドイツ統治下にドイツ人のためにつくられた劇場だったのに対し、国立劇場の方はチェコ人が自分たちのために作った劇場で、かれらのアイデンティティ確認の涙ぐましい歴史が刻まれている。
内部は国立オペラ劇場より華麗、壮麗だった。劇場サイトに掲載されていた写真を載せる。

「チェコの劇作家の作品をチェコ人俳優がチェコ語で上演」というポリシーを採っているということだったが、この日の『カルメン』はビゼーの原作通りフランス語で上演、字幕がチェコ語、英語でついた。

性の狂気を描いたものだけれど、チェコ人歌手のドン・ホセはそれを出すにはちょっとおとなしめだった。きれいなテナーだったけど、身体の底から噴出する狂おしいまでの情熱の暴力性を描くところまではいっていなかった。この日、プログラム(といってもあっけないほどシンプルなチラシ)をもらい損ねたので、名前が分からないのが残念。

カルメン役の女性は小柄だけれど、精一杯この等身大からははみ出すキャラクターを演じようとがんばっていた。きれいなメゾソプラノよりのアルトで、声だけを聴いていると単に美しい女性、それも海千山千のあばずれというより、どこか純粋さを残す若い女性の感じがした。カルメンというキャラクターの解釈はいろいろできるだろうから、これもひとつだろうけれど、「憎しみをかきたてられてしまう」ほどの徹底した自己中心的人物像を造形して欲しいなんて、ちょっと勝手なことを思ってしまった。ジプシー的な奔放さを描くにはこの人もおとなしめだった。

逆にオケの方は地味なのが良かった。あまりに目立つと舞台の歌手たちを喰ってしまう可能性があるから。それでなくても音楽的にはずいぶんとパッショネイトな極限をかきたてられる作品だから。

この日最も感心したのがセットだった。とくに大道具。三次元空間を最大限利用した物で、上下に、左右に、そして前後にそれらが移動するサマは圧巻だった。三次元に時間の流れをはめ込み、四次元空間を実現しようとする試みだった。電気のコードとおぼしきものが舞台にいくつか貼付けられていたのはご愛嬌だった。カルメン役の歌手が二度も躓いていて気の毒だったけれど。日本の「劇団新感線」などもこちらへ来て、こういうセットを参考にしているのではないかと一瞬思った。もちろんその逆も可なりで、チェコの演出家が日本にきているのかもしれないけど。こういう立体的舞台をみると、歌舞伎などがフラットにみえてしまう。歌舞伎が変わるのは無理だろうけど。
以下にBohemia Ticketに掲載されていた写真。セットの感じが掴めるだろう。

なんと!Youtubeに『カルメン』の冒頭部分があった!

新市街側からみた劇場

内部

観客席には旅行者とおぼしき日本人の姿がけっこうあって、驚いた。去年同時期にプラハに来たときは街で日本人に出くわしたのは2回のみだったので。日本で高いチケットをとってきたのだろうか。先ほどネットをみていたら、日本のエージェントが手配をしているようだけど、かなり高めだった。こちらへ来て、ネットでe-チケットをとるなり、あるいは劇場のボックスオフィスへいけば、割安で入手できる。当日でもたいていは席をとることが可能である。私は当日の朝、ホテルの部屋でネットサイト(Bohemia Ticket)で空席確認をした上で、e-チケットをホテルのレセプションの人にプリントアウトしてもらった。残席中の最も良い席を選んだ(前から5列目の左よりの平土間席)のだが、これでわずか1100コルナ(日本円で約5500円)、信じられない値段である。でもプラハの人にとっては「高価」なんでしょうね。私の周りは一見して裕福と分かる観客だった。例の日本人たちも良い席を確保していた。