yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『質屋の娘』春陽座@梅田呉服座2月3日昼の部

春陽座には2011年の夏の暑い盛りに新開地劇場、そして明生座と立て続けに通ったことがあったのだが、この芝居を観るのは初めて。大衆演劇では有名な狂言なのかもしれない。前に他劇団で観たことがある。春陽座版では、おふくを澤村かずまさん、手代清次郎を滝川まことさん、おさよを澤村かなさん、質屋の主人を澤村新吾さんだった。かずまさんは『祭の夜』という春陽座十八番の芝居でもおなかという不器量娘を演じるのだけど、メイクもそのときと似ていた。こういうの、お好きなんでしょうね。

笑わせて、さいごにほろりとさせる絵に描いたような人情喜劇。春陽座の上手さが光る。清次郎のまことさん、おさよ役のかなさん、細やかな演技。さすが春陽座と納得させるものだった。また、質屋の主人役の新吾さんは、もう云うことのない手練の演技。大衆演劇界ではナンバーワンに近いところにおられる。ただ私にはこういう巧さがときとしてくどく映り、鼻につくのも事実。それもあって、観なくなってしまった。もっとご自身の存在感を「薄めて」その分、心さん、かずまさん、そしてまことさんたちがひき立つようにすべきだと思う。年齢層の若い観客を惹き付けるにはそこのところがもっとも肝要ではないだろうか。以前のように巧さでは好敵手の沢田ひろしさんがぬけてしまっているので、その分を「がんばらなくては」ということで、こういう形にならざるを得ないのだろうけど。でも座長も花形も確かな演技力だし、かなさん、真緒さんというこれまた演技に定評のある女優さんに恵まれているのだから、新吾さんがもっと後ろに退いた方が、観客受けが良くなると感じた。観客をみれば、やっぱり年齢層は高め。梅田呉服座は立地と開始時間の関係上、比較的年齢層の若い人が多く来る印象。お芝居がこのレベルの高さなのだから、あと一工夫だと思う。

まことさんの演技、以前よりも数等グレードアップしていて舌を巻いた。以前にはここまでの色気がなかった。チケット販売でも「まことコール」が頻繁だったことは、その証左だろう。

また、「おふくと清次郎とを結婚させるつもりだ」という主人の話を聴いた折の女中おさよの演技、さすがかなさん。上手い!そのおさよを気遣う清次郎役のまことさんの演技も光っていた。さりげない演技。このお二人の演技をみれただけで、来た甲斐があったと思わされた。こういうさりげない演技ができるのは、このお二人だけではなく心座長もそうである。その意味では、春陽座は「大袈裟に山をあげる」大衆演劇の芝居でないものを見せてくれる数少ない劇団の一つだ。だからこそ、お芝居を重視する良質の観客をひきつける魅力があり、もっと観客動員ができるはずである。