yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『泥棒道中』都若丸劇団@明生座11月26日昼の部

笑い過ぎて悶絶死しそうでした。どなたかのブログでとても面白いことは分かっていたのですが、ここまでとは!昨日の『瞼に母』も松竹新喜劇風のとびきりのお芝居で、8月に花園会館で観たときとは、すこし感じが変わっていました。それについてはいずれ書くつもりにしています。若丸さんは同じお芝居でも(アドリブ部分は特にそうなのでしょうが)かなり変えられることがあるようで、それに応える剛さんをはじめとする座員さんにも、「力量」が要求されるのだと思います。座員さんたちがそれにしっかりと応えられているのも、都若丸劇団のなによりもの強みなんですよね。

またもやEvernoteにうちこんだ情報を消してしまって(最近おかしいようです)、記録が残っていないので、名前等はあやふやですが以下が大体の粗筋です。

泥棒で札付きの悪の亀四郎(若丸さん。この化粧、コッケイでいて「悪い」キャラをよく出していました)、今日も今日とて茶店前で「獲物」を探している。そこへやってきたのがピカピカの新しい旅装束をした若い商人(剛さん。こういう「実直な」さまが本当によくお似合いですよね)。商人に目をつけた亀四郎。自分も商人(どうみても物乞いにしかみえない出立ちなのですが)だと安心させ、彼が30両の小判をもって郷里に帰る途中だということを聞き出す。自分も100両を持っているのだが、一人旅では追いはぎにあう可能性があるので、一緒に旅をしようと持ちかける。茶代は自分が払うといって奥にひっこんだところに、茶店の亭主が出てきて、亀四郎こそが悪名たかい凶悪な泥棒だと商人に耳打ちする。驚いた商人。逃げようとしたのだが、亀四郎に捕まってしまう。このとき、下手が茶店なので、上手に剛さんが逃げようとしたのですが、その上手から若丸さんが出てきて剛さんを捕まえます。爆笑でした。

「奉公している店に忘れものをしたので取りに帰る」とか、さらには仮病を使ってまで剛さんは若丸さんから逃げ出そうとしますが(すみません、こちらの名前の方がなにか臨場感があるので)、そのたびに同じエクスキューズを使われて逃げ出すことができません。剛さんが忘れものを取りに帰るというと、若丸さんが店までついて行くといい、剛さんが腹痛というと、若丸さんも「ぽんぽんが痛い」というってな具合で、この掛け合いが数回ありました。おしまいに、言い訳をする側が入れ替わっていて、若丸さんが、「こっちの方が先だろ」と言っていました。ここでも観客席が沸きました。

やっとのことで若丸さんから逃げて来たものの、旅籠の前で再び捕まってしまう。若丸さんはここで宿をとろうと言うだが、剛さんはまだ陽も高いので先を急ぐと言いはる。で、突如として(!?)あたりが暗くなり、剛さんも仕方なく宿をとることに同意する。問題は宿では必ず宿帳をとられること。下手にしゃべられては困るので、若丸さんは剛さんが「あぅっ」としか言えないことにすると決める。

宿に上がって、さっそく女将(ひかるさん。ほんとうにお上手!この巧みさは藤山直美さんを思わせます)が宿帳記入のため、いろいろ訊いてくる。名前はときかれて若丸さん、「淀川クリステル」。剛さんのことを訊かれて、「弟で10歳」、その名は「ヨッツ・マングローブ」。大爆笑の連続でした。すましたお顔で、「変わったお名前ですね」というひかるさんに、漢字の当て字をいう若丸さん。剛さんは何をきかれても、例の「あぅっ」。女中さん役の女優陣も笑いをこらえるのに大変でした。はなれの一番奥の部屋を所望する若丸さん。

二人が奥に引っ込んだ後、女将の兄の岡っ引き(城太郎さん)がやってくる。凶悪な泥棒、亀四郎がこのあたりにやってきたのだといって、人相書をみせる。それがなんと(笑)泥棒の若丸さんそっっくり。とくに頭の毛の薄いところが。ここでもお客さん大笑い。その男なら連れと一緒にはなれに泊まっているという女将。岡っ引きは夜襲をかけて取り押さえると約束して、帰って行く。

はなれの部屋ではどちらが先に風呂に入るのかで、若丸さんと剛さんが「譲り合って」いる。若丸さんが先に風呂に行ったので、彼が大事そうに枕の下にかくしていた巾着をみてみると、やっぱり入っていたのは石ころだった。そこへ、女将がやってきて、事情がすべて分かったので夜中に捕り物になると剛さんに伝える。剛さんは女将のもってきた湯のみを自分の巾着にいれ、30両を女将に預ける。若丸さんが戻ってきたので、今度は剛さんが風呂へ。ここでも出て行ったはずの剛さんが数回戻ってくるたびに、おかしなダンス(?)をおどる座長。剛さんがいなくなったのを確かめて、彼の布団の下の巾着を確認する若丸さん。湯のみをみて、腹を立てる。ここは一番、彼が寝たあとで奪おうと考える。部屋に戻ってきた剛さん。なぜ若丸さんが「不機嫌」なのかと訊ねる。

若丸さん、「もう寝よう」という。このとき、「電気を消して」と思わず(?)言ったので、剛さんが「『灯りを』でしょう」と突っ込みを入れる。「『灯り』といったよ」と言い張る(!)座長。ここでも座長の権威を振り回して(その振りをして)、二人で言い合いがありました。楽屋落ちも入っていて、なかなか聴きごたえがありました。

で、ここからが例の悶絶シーン。行灯を消すとどこからともなく音楽が聞こえてきて、それに合わせて変な振りで踊る若丸さん。お客さん大爆笑。それが終わって、今度は剛さんが行灯を消そうとすると、またもや音楽が。剛さんも座長に負けず劣らずのオモシロ舞踊をみせて下さいました。これを5回繰り返しました。若丸さん汗だく。剛さんは比較的涼しげなお顔でした。どれも比較的最近の曲ばかりでした。途中、客席から「アンコール、なしやな」の声が。そんなお客さんに舞台上から言い返す若丸さん。これもオカシカッタ。5回目の「掛け合い舞踊」の際、「はいチップ」と若丸さん。なんと、客席から「はーい」という声。それで、(なかば無理矢理に)「チップ」を手渡された若丸さん。あと、舞台上で「この芝居へのクレームは一切受け付けません。まともなお芝居を観たい方は明日いらっしゃって下さい」と、若丸さん。

いよいよ灯りが消えると、短刀をもって真っ暗闇の中、剛さんの布団へ忍び寄る若丸さん。一方剛さんも行灯を掛け布団の下に入れて逃げ出そうとする。二人のこの「暗闇」での探り合いも笑えました。歌舞伎にもこういうシーン(たとえば『曾根崎心中』のお初、徳兵衛が道行きで置屋を抜け出す場面)はありますが、これは大衆演劇のものらしく、思いっきり誇張されていました。

そこへ捕りものの役人がやってきて、二人にこの数人が加わっての探り合いになる。しかし遂には亀四郎は御用となってしまう。

このお芝居は大幅な時間延長になりました。それでも次の舞踊ショーもきっちりとされました。さすが都若丸劇団。ラストの「百花繚乱」はすばらしかった。扇をもっての全員の舞踊だったのですが、稽古のあとがうかがえるパーフェクトなものでした。「凛としている」というのが、この劇団の舞踊ショーを顕す表現ではないでしょうか。そしてなによりも完璧です。

舞踊ショーで一番スゴイ!と思ったのはキャプテンの「凍て鶴」でした。ホントの鶴のように、はかなげでした。キャプテン世代の役者さんの中で、他のどなたよりも踊りがすばらしい。その上、若い世代が適わない何かをお持ちです。他劇団では息子さんたちの方がお父さんたちよりも優れていることが多いように思いますので、ここは例外なのでしょう。

昼の部だけで四倍の大入りでした。