勝間和代さんの本で一躍有名になったフォトリーディングですが、私も講習を受けました。それも彼女が受講した2004年に遡ること3年の2001年に。先輩風をふかしても意味ないか。要はそれを実際の仕事・研究にどう生かしたかということで、勝間和代さんに比べると私は大して役立てているとはいえない状況ですから。
アメリカの大学院の5年目で、コースワーク(卒業に必要な科目を取得すること)が終わって博士論文に着手した頃、たまたま書店で立ち読みした本がフォトリーディングの開発者のものだったのです。インターネットで調べて、申し込みました。三日間の講習が大枚550ドル(だったと記憶していますが)はその頃の私にとってはかなり高額だったのですが、何か「これだ!」と感応するものがありました。論文を書くのにきっと役立つだろうという計算もありました。
実際は論文を書くのにはあまり役には立たなくて、むしろすでに修了していたコースワークのときにこのメソッドを知っていればずいぶんと楽が出来たし、よいアサインメントを書くことができたはずだったと歯軋りしました。初日の終わり頃にはそれが分かって少しがっかりしましたが、それでもきわめて有効なスキルの一つで、将来何かに応用、援用できるという確信はありました。
三日間の講習はフィラデルフィア市内とはいえかなり辺鄙なところにあるマリオットホテルの一つで実施されました。アメリカのホテルの多くはこういう講習や学会の会場に部屋を貸して、賃料をとっています。問題はそのロケーションでした。そこに行くには市内を走る地下鉄の中で最も物騒なブルーラインを利用しなくてはならず、それを終点まで乗った後、黒人居住区の中を通り抜けてバス停まで行かねばなりませんでした。確か木・金・土の講習で、木・金は夕方の5時から9時までだったのですが、帰りは決死の覚悟が要りました。土曜日の講習は朝の10時から4時までで、これは見るに見かねた友人が送り迎えをしてくれて、ほんとに助かりました。
15人程度の参加者のうち学生は私とあと一人のみで、他はすべてビジネスマンでした。講師は50代後半の女性で、私一人が「外国人」ということで、ずいぶん親切に指導してくれました。かなりインテンシブな講習で、びっしりとノウハウを叩き込まれました。勝間さんも書いているのですが、人間の認識能力の中で、最も効率がよく、そして優れている視覚を最大限活用し、本のページをイメージとして頭のなかに写し取ってゆくのです。ちょうど見開いた2ページを写真に撮る感じです。実際に「カッシャ」と音たてながら、各見開きページを3秒程度で繰って行くのです。そのときのこつは、左右両眼の視覚の中に見開いた2ページをすべて囲い込み、2ページの間の部分が浮き上がってくるように視ることです。これがなかなかつかめなくて、苦労しました。
なにか「信じられない」いかがわしい、そしてまるで新興宗教の唱えるチャンティングのように聞こえるかもしれませんが(事実私も半信半疑でした)、これを受けると、たしかに本を読むスピードが速くなりました。この方法の肝は、本の中のエッセンスにあたる部分、著者が最もいいたかったことを類推し、その上でそれを軸として全体像をつ掴みとるというところにあります。この練習を何度も何度も繰り返し練習させられました。
これを今頃になって、復活させ利用しようかと考えています。自分を実験台にして、効果のほどを確認する作業を本気ではやっていなかったからです。それをしなさいと「私の中のゴーストがつぶやく」のです。