日本の大学には「ゼミナール」というわけの分からない科目があります。私の卒業した日本の大学ではなかったのと、アメリカの大学でもそれに類するものがなかったので、今だに違和感を感じてしまいます。タイトルから想像するに多分ドイツからの「輸入品」なのでしょう。高校などの「ホームルーム」に当たるのではないでしょうか。大学に来てまで「ホームルーム」?と思ってしまいます。
この授業を担当して一番困るのは、担当する教師に何が求められているのかが判然としないということです。1年生が対象のクラスでは「初年次教育」と称して文章を書く指導、簡単なレポート、プレゼンテーション作成の指導が実施されることになっています。題材は担当者の専門を一般化したものを選ぶようにという約束になっていますが、私は専門が文学ですので、所属する学部(経営)とはまったく関係のない分野をどう一般化すればよいのか、はたと困ってしまいます。
というわけで、もともと学部で「けったいな人」と思われているのをいいことに、2年前から「アニメ」をやることにしています。「アニオタ」大歓迎というメッセージが効いたのか、今年のゼミは「大正解」でした。日本に帰国して大学で教えるようになり、一番頭痛の種だったのがこの種のゼミだったのが嘘のようです。普通後期になると出席者が激減するところ、後期初日から24名の登録者中22名出席という「快挙」です。
一年を通してのテーマは「アニメにおけるパクリの系譜を検証する」というのですが、前期、学生はいろいろなネタで楽しませてくれました。高校で発表の仕方とかレポート書きかたのきちんとした指導を受けてきていないので、それに関してはぼろぼろでした。これは予想通りでしたので、あとは指導すればいいだけのことです。仮説を立ててそれを検証し、立証するという過程は彼らにとっては初めての作業だったはずです。でも結構ついてきてくれて、これも予想外でした。多分アニメオタクは頭がいいのですね。
後期はクリティカル・シンキング、そしてロジカル・シンキングのノウハウを導入して、きちんとしたプレゼンの仕方、そしてレポートの書きかたを身につけてもらうつもりです。
意見交換をするのに楽だということで、ゼミクラス用のブログを「hatena」に立ち上げました。大学にも教材を公開するシステムはあるのですが、かなり rigid で、interactive とは到底いえない代物です。アメリカだと e-blackboard という優れものの商業用のサイトがあって、学生―教師、学生―学生間の意見交換はそこで行えるのですが、日本ではほとんどの大学で導入していないようです。多分非常に高価だからでしょう。
ついついアメリカの環境と比べてしまうので、不満だらけなのですが、学生にはできるだけ将来に役立つストラテジーを身に着けてもらいたいと願っています。