昨晩放映された再放送をみた。以下はNHKのサイトからの解説。
日本を代表する作曲家の一人、冨田勲さん(80歳)。自身の集大成となる「交響曲」を作曲しました。その名も「イーハトーヴ交響曲」。テーマは、冨田さんが長年描きたいと思い続けてきた、作家・宮沢賢治の世界です。賢治の4次元的・宇宙的な世界観を、どうやって音楽で表すか。悩んだ末、冨田さんが思いついたのは、なんとインターネットの動画サイトで大人気のバーチャル・シンガー“初音ミク”の起用。こうしてオーケストラと初音ミク、200人の合唱が奏でる、前代未聞の壮大な交響曲が生まれることに。その5か月に及ぶ制作過程に密着。なぜ宮沢賢治の世界に初音ミクなのか。そして、交響曲誕生の裏に秘められた、賢治の「雨ニモマケズ」をめぐる10年越しの約束とは。みずからも少年時代に大地震に被災したという冨田さんが交響曲に託した、東北の被災者への思いとは。人生の集大成だ、という「イーハトーヴ交響曲」に込められた冨田さんの思いに迫ります。
「イーハトーヴ交響曲」の演奏は、5.1chサラウンドで放送いたします。
NHKはこのように民放が手がけないレアな企画をする。これもその一つ。サイボーグの音声版とてもいうべき初音ミクと宮沢賢治の作品とのコラボを実現したもので、エポックメイキングな試みといえるだろう。残念ながら去年11月23日の東京オペラシティでのコンサートを見逃しているので、今年後半のコンサートに出かける予定にした。おそらく歴史的瞬間に立ち会うことになるだろうから。以下がコロンビアのサイトから採った今後のコンサートの一覧。
• ●花巻公演
• 2013年8月29日(木) 花巻市文化会館(岩手県)
• 大友直人(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団• ●名古屋公演
• 2013年9月1日(日) 愛知県芸術劇場大ホール(愛知県)
• 大友直人(指揮) セントラル愛知交響楽団、他• ●東京公演
• 2013年9月15日(日)〜16日(月・祝) Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
• 河合尚市(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団、他• ●大阪公演
• 2013年9月21日(土) オリックス劇場(大阪府)
• 河合尚市(指揮) 大阪交響楽団、他• 名古屋/東京/大阪公演 総合お問合せ先:キョードー横浜 045-671-9911
私が初めて「初音ミク」の名を聞いたのは3年前のゼミの学生からだった。1年生のゼミで、テーマは各担当教員が選んでもよかったので、「アニメ、マンガ」ということにした。学生がゼミを選べたので、そういう方面に詳しい学生が多く集まってきた。去年からは1年生のゼミは共通ゼミということになってしまったので、テーマを設定できない。それが私が辞職したい理由のひとつでもある。当時2クラス担当したのだが、それぞれに面白い人材がいた。とくにサイボーグ関連(?)アニメの超オタクがいて、色々と教えてもらった。アニメではなく、音楽に造詣の深い学生もいて、その発表が「ボーカロイド」についてで、彼から初音ミクの名を聞いたのだ。実際にその音楽を聴かせてくれたのだが、極度に人工的で違和感があった。でも、どこか不思議な魅力を感じたし、すごいことが進行中なのだとも実感した。
宮沢賢治の世界を「具現化」するのに初音ミクを採用するとは、さすが富田勳。その瑞々しい感性にはただ脱帽。放送でもコンサートの一部が流れたが、オーケストラが演奏している最中に初音ミクさんのあのエスリアルな像が透かしたように舞台に登場する様は、かなり衝撃的である。まさにフューチャリスティック!
音楽化するにあたっては、技術的な問題があって、苦労したいきさつが詳細に描かれていた。だからその結果としての『イーハトーヴ交響曲』は、音楽とテクノロジーとの合作、競演といえる。一番困ったのがテンポの変化をどうつけるかということだったようで、コンピュータ技術者(といっても芸術家の域の)が、緊密に関わっていた。富田さんはその過程も漏らさず関わり続けていたのが、印象的だった。年齢をまったく感じさせない旺盛な意欲、音楽に対する深い愛情が、映像から伝わってきた。
そもそものきっかけは親類にあたるあの西澤潤一さん(元東北大総長、のちに岩手県立大学長を歴任)からの「宮沢賢治の『雨にも負けず』を音楽化してほしい」という依頼だったということである。富田さんはあの大震災のあと、賢治の世界を音楽化するということへの使命のようなものを感じ取られたようである。
9月の各地でのコンサート、大阪のものに行こうと考えている。