yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」by 大阪フィルハーモニー交響楽団@高槻現代劇場 11月20日

交響曲演奏を聴くことはさほどなくて、ベートーヴェンの「第九」、「田園」、「運命」という有名どころ、それかシューベルトの「未完成」、そしてベルリオーズの「幻想交響曲」なんていうポピュラーな曲のみだったような気がする。そのほとんどが大フィル、それも朝比奈隆さん指揮のものだった記憶が。もちろん「英雄」は初めて。

神戸在住だった朝比奈氏には、自称「神戸っ子」としていささかの思い入れはあったのだけれど、このコンサートは大フィルをめがけて予約したものではない。もっといい加減な理由なのがお恥ずかしい。高槻現代劇場の片山九郎右衛門師シテの「明月能」を予約しようとしたら、すでに満席。いわばやけくその勢いで公演一覧にあったこのコンサートに行くことにした。

とても躍動感があり軽やか、そしてちょっと遊びのある演奏だった。指揮者が石川星太郎さんというまだ35歳の方だったこともあると思う。加えて演奏者の方々もみなさん若い。人数も交響楽団の割には(?)若干少なめ。ただ大フィル公式写真からみると正規構成のようである。

交響曲を敬遠してきたのはその重厚さが苦手だったのだけれど、ここまで軽やかなら、もっと聞いておけばよかったなんて考えながら見ていた。重厚ではないけれど、やはりフルメンバーでの「合奏」は圧倒的魅力で迫ってきて、まさにoverwhelmedだった。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、オーボエの弦楽器の音が滑らかで芳醇だった。合間、合間に入る管楽器も麗しい。いまさらにWikiで復習している。

第一楽章、チェロが目立つのはテーマがチェロで提示されているからだろう。また予想よりもはるかに斬新な感じがしたのは、「半ば標題的な楽想の表現のために不協和音を巧みに使うという個所が、複数の要所に置かれているという意味でも画期的な楽章」だからかもしれない。ベートーヴェンの新しさを認識させられた。アップテンポ感はこの不協和音からきているのかもしれない。第二楽章、「フーガを形成しながら、緩徐楽章にはかつて見られなかったような金ティンパニーの威力や、不協和音の効果も交えて、クライマックスを築く」とあるけれど、このフーガがなんとも心地よいのだけれど、直後にそれを破られる。伝統を採りこみつつ、それをよりとがった形にしてクライマックスへと繋げているわけ。第三楽章の冒頭のヴァイオリンのリズムにも度肝を抜かれる。演奏者はそれを楽しんでおられる感じがした。ホルンの重奏も非常に効果的に使われている。全体としてもホルンが非常に威力を発揮させられる構成になっているのを感じた。第四楽章の最終部はその加速度のついたテンポがとにかく圧巻。呑み込まれてしまう感じに興奮が止まらなかった。

ベートーヴェンの「斬新」が、若い指揮者と若い演奏家たちによって余すことなく表現されていた。この場に立ち会えてよかった。敬遠してきた交響曲をもっと聴きたいという気持ちになった。指揮をされた石川星太郎さんは神戸市室内管弦楽団の定期演奏会でも指揮されているようなので、今後地元で聴く機会もあるように思う。