yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「ラファウ・ブレハッチ  ピアノ・リサイタル」@ザ・シンフォニーホール大阪 10月23日

2005年のショパンコンクール優勝者。マズルカ賞、ポロネーズ賞、コンツェルト賞、ソナタ賞を同時に受賞した当代有数のショパン弾き。「同世代で最高のショパン弾き」と称されている。同じくポーランド生まれのクリスティアン・ツィマーマンに続きポーランド人二人目のドイッチェ・グラムフォンと契約をしている。さすがショパンコンクール優勝者。最近聴いた演奏者では実力が抜きん出た印象だった。

ショパンとくるとやはりツィマーマンが最初に頭に浮かぶ人が多いと思う。羽生結弦さんのSPでも使われていた「バラード1番」は、特に日本人にとってはとても馴染みのある曲になっている。ショパン曲は他の西洋音楽の作曲家とは異なり、日本人に強く訴えかけるものがあるんですよね。

私にとってはショパン弾きといえばポリーニだったのだけれど、そのポリーニに比べるとツィマーマンの演奏は情緒的というか、あくまでもポーランド人としての美学にこだわった弾き方に思えた。ポリーニの理知的というかシャープさとはかなり違っていた。

そしてこのブレハッチの演奏である。最後に弾いた「ピアノソナタ第三番」はポリーニともツィマーマンの演奏とも違っていた。超絶的に巧いという点では二人と共通しているけれど、ペダルを多用していて、自身の解釈を際立たせる、それも矩ギリギリまで誇張して際立たせようとする意図が見えた。だから好き嫌いは分かれるかもしれない。ショパンの曲の中に己を統合してしまうのではなく、あくまでも自己主張にこだわる姿勢が見えた。ポーランド人としての矜持なのかもしれない。

ショパン曲に比べると最初の方のベートーベン曲はもっと大らかな感じがした。ベートーベン曲特有の「重さ」というか重厚さがうんと減じられ、軽やかなタッチに換えられているのが印象的だった。

一番度肝を抜かれたというか、予想外だったのが最初のバッハのパルティータ。とても華やかなパルティータだった。ピアノの弦の奥行きと豊かさを極限までに使ったパルティータ。面白かった。

そしてアンコールはやはりショパン。「ワルツ第7番op.64-2」だった。優しく美しく、それでいて懐かしくて、涙が出そうになった。さらりと、こともなげに弾き終わり、さっと退場するブレハッチさん。舞台上にすてきな演奏の余韻がしばらく残っていた。観客の期待に応えてくださったんですね、ブレハッチさん。

当日プログラムをスクショしたものをアップしておく。ちょっと暗いのだけれどご容赦。

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