yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

カンバーバッチのモンスター役で『フランケンシュタイン』 presented by National Theatre Live、2020年5月1日YouTube公開

なんと5年前の舞台映像を「Stay at Home」の私たちに公開するという、NTLの大盤振る舞い。世界中からのコメントの嵐で、人が舞台に飢えていたことがよくわかる。公開期間は限定的だろうけれど、一応サイトをリンクしておく。

www.youtube.com

私は2016年にこれが「National Theatre Live」として全世界公開された折、カンバーバッチ主演ではなく、ミラー主演で見ている。このブログ記事にしているので、こちらもリンクしておく。そこにいかに衝撃を受けたかを書き連ねている。

www.yoshiepen.net

その冒頭場面のあまりにもの奇抜さにいかに衝撃を受けたことか。それがこのカンバーバッチ版を見て改めて甦ってきた。極めてシンボリックというか、抽象的な舞台装置。そこにあまりにも無惨な姿形の怪物がのたうち回りながら登場する。原初的人の原型と現代テクノロジーとの相克?「デウス・エクス・マーキナ」を想起させる演出だった。

怪物役はBenedict CumberbatchとJonny Lee Millerのダブルキャスト。博士役も二人が交代というキャスティング。

もっとも心温まるシーンが怪物と盲目の学者De Laceyとの交流場面。彼は怪物に読み書きを教え教育した。怪物はプルターク、ミルトンの『失楽園』を引用するまでになった。しかし、De Laceyの息子夫婦に見つかってしまい、彼の元を去らなくてはならくなる。

やがて、彼の創造主であるフランケンシュタイン博士を出会った怪物は「連れ合い」を作って欲しいと懇願する。しかし、それは衝撃的な結末を迎えることに。

さらに胸が張り裂けそうになる場面、それが怪物が彼を作り出したフランケンシュタイン博士問いかける場面である。彼は言う、「Don’t leave me. Don’t leave me alone. You and I, we are one僕をひとりにしないで!あなたと私は表裏一体なのだから」と。博士とモンスターがダブルであることが、このセリフからわかる。そのあとの、「Master, what is death? Can I die? 死とはなに?私は死ぬことができるの?」という怪物の嘆き、それはあまりにも悲しい。

「知る」ことによって、苦悩に目覚めてしまった怪物。それは「失楽園」でのアダムとイブに重なるだろう。だからこそのダブルキャストで、この二つの舞台を連続してみると、より一層この物語の深淵が理解できるように思える。ただ、今の私にはそこまでの気力、胆力がなくて、五年前に見たミラー=怪物版をかろうじて思い出しながら、比較している。ミラー版の方が私には衝撃的な印象だった。カンバーバッチの方が博士然としているように感じたのは、彼のヒット作、『シャーロック・ホームズ』の余韻が未だに残っているからかもしれない。