yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

年期の入った幸四郎のつっころばし『大當り伏見の富くじ』in「壽初春大歌舞伎」@大阪松竹座1月14日夜の部

ちょうど8年前にこの松竹座で当時染五郎だった現幸四郎が大活躍だったこの芝居を見ている。その斬新に強烈な印象を受け、記事にしている。リンクしておく。

www.yoshiepen.net

もう8年も経ったのかと感無量。染五郎は幸四郎に「出世」して、他の演者にも入れ替わりがあった。今回の主だった演者は以下。「同」とあるのは8年前と同じ演者。それ以外は名前を表記している。その下に「歌舞伎美人」サイトからお借りした「みどころ」を付けておく。

紙屑屋幸次郎 = 松本幸四郎(10代目)     同

信濃屋傳七 = 片岡愛之助(6代目)        同

幸次郎妹お絹 = 中村壱太郎(初代)       同

喜助 = 大谷廣太郎(3代目)           松也 

島原の太夫千鳥 = 中村虎之介(初代)         宗之助

信傳寺住職呑海 = 嵐橘三郎(6代目)        同

芳吉 = 澤村宗之助(3代目)          鶴亀

熊鷹のお爪 = 上村吉弥(6代目)        竹三郎

黒住平馬 = 市川猿弥(2代目)            同

絵師雪舟斎 = 坂東彌十郎(初代)         歌六

鳰照太夫 = 中村鴈治郎(4代目)         同

 

 元は質屋の紙屑屋幸次郎は、潰れた店を再興しようと一所懸命働いていますが、遊女の鳰照太夫に見惚れてしまい、うっかり犬を踏みつけ、すねを噛まれるような不運さが玉に瑕(きず)。それでも頭は鳰照太夫のことでいっぱいです。そんなある日、幸次郎は一攫千金を夢見て、伏見稲荷の富くじを買うことにしました。その富くじが何と大当たり。しかし本当の札は…。
 平成24(2012)年の初演で好評を博し、このたび皆様の熱いご要望にお応えして再演します。笑って笑って、ほろっと泣ける、歌舞伎の新しい喜劇をお楽しみください。

とても楽しく、お腹を抱えて笑ったのは前回と同じだった。幸次郎のおバカぶりは健在だし、他の役者もその「おバカ」をしっかりとサポートしていた。今回の方が役者陣の緊密感というか同質感が強いからだろう。ただ、実際はかなり印象が違っていた。何故なのだろうと考えている。主要な役どころは変わっていないので、全体としてはそう違ってはいなはずなのに。

一番の理由は染五郎が幸四郎になったことかもしれない。「責任感」という重荷も幸四郎は感じ始めたのかもしれない。私としては、8年前を踏まえた上で、もっとぶっ飛んで欲しかった。名実ともに今最も力と華のある役者である幸四郎。上方勢にそう気を使わず、弾けても良かったような気がする。彼が引っ張れば、上方役者は普段にも増して弾け倒したのでは。 

ちょうど中日、なかなかペースがつかめないのはわかる。とくにこういう喜劇の場合は。でも染五郎なら、もっともっとカゲキにできたはず。あの「弥次喜多」のように。猿弥、彌十郎なんていう鬼才が打ち揃っているのだから。8年前よりももっとカゲキに、面白くできたように感じた。とはいえ、先日東京の国立でみた「チャップリン」よりは、ずっとカゲキではあったんですけどね。染五郎も幸四郎になって、ちょっと「畏れ」を知ってしまったのかも。上方という土地に、その風俗に、そして何よりも人に。でも鴈治郎もその子息、壱太郎も幸四郎の挑戦には喜んで参戦してくれると思う。ぜひ、そう時間をおかずに再上演してほしい。

吉弥がいやらしさ全開でステキ。猿弥は「バカ殿ぶり」が前より増幅。鳰照太夫はちょっと歳をとったけれど、やっぱり可憐。壱太郎も可憐な娘役がいかにもはまっていた。そして昨年8月歌舞伎座で見た「弥次喜多」第四弾でぶっ飛び若武者?を演じた虎之介がここでは殊勝な花魁姿で出ていて、笑ってしまった。