これ以上ないほどの充実した役者陣。面白くないはずがない。終始お腹を抱えて笑っていた。演者は以下。
太郎冠者 茂山千作
主 茂山茂
察化(すっぱ) 茂山千五郎
KWP 狂言wiki化プロジェクト(仮)からの「察化=咲嘩」概説(一部補筆)が以下。
連歌の初心者講座の当番になった主人は、伯父に講師を頼もうと太郎冠者を呼んで使いに出す。
京都に来た太郎冠者は、伯父の名前も住んでいるところも知らなかったので困ってしまう。そこで物売りを真似して大声で呼びながら歩いてみる。そこへやってきた咲嘩は、伯父になりすまして太郎冠者をまんまと騙す。
そして主人の家にやってくるが、主人は咲嘩の招待を知って驚く。しかし事を荒立てては大変だと思って、振舞って帰そうとするが鶯を思い出せなかったり、
鷹を人のあだ名だと思ったりと呆れた馬鹿である。太郎冠者に自分の真似をしろと主人が命じて太郎冠者は従うが、ますます場が混乱してしまう。主人はとうとう怒って太郎冠者を張り倒すが、太郎冠者は真似をして咲嘩を張り倒す。
主人は呆れ果て「お前、もう知らん」と逃げて行く。太郎冠者も同じように「お前、もう知らん」言って退散。最後は察化も、「これは、たまらん. . . .」と逃げて行く。
察化(すっぱ)とは詐欺師のこと。そういえば2013年に南座でみた歌舞伎、「太刀盗人」にもすっぱが登場したけど、あれも元は狂言。すっぱを松也が演じていた。滑稽味はやっぱり本家狂言師の方が上。
太郎冠者、主人、すっぱを父と息子二人で演じる。千作さんの太郎冠者がなんともおかしい。絶妙の間と絶妙の台詞回し、身体がすべて軟体動物になったかのような動き、それらから醸し出されるなんともいえないおかしみ。当代一の狂言師。対するすっぱ役の(千作さん長男の)千五郎さんは、お父上の素っ頓狂ぶりに全力で(?)立ち向かう。親子対決。でもやっぱりお父上が一枚上。主人役を演じた次男の茂さん、年齢的には逆転しているのに、年かさの主人に見えた。
三人に共通しているのが、声のすばらしさ。前にずずっと出る声。くぐもりがない。しかも節回しのコントロールが効いている。絶妙の間の取り方。どれをとっても狂言が狂言として成り立つのに必須条件。茂山家(一族)でこれらの一つでも欠けた人をみた(きいた)ことがない。いつも「すごい!すごい!」と感心して、もちろん笑い転げながら、見ている。
姫路薪能で最高の狂言が観れたのは大収穫。