yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「黄土の大地を走る ~村医者・父と子の物語~」2009年4月18日放送分の再放送@NHKプレミアムカフェ

まるで中国版赤ひげのような漢方医の賈光明さん。骨身を惜しまず昼夜村民のために尽くす姿は、聖人の域。収録からすでに8年以上経過、彼は今も元気にしておられるんだろうか。検索をかけてみたけれど、情報を掴めなかった。お元気でいて欲しい。どなたかご存知の方が情報をあげてくれないものだろうか。以下が放送当時にネットに出た情報。

黄土高原の東端、山西省石楼県西衛村。近くに病院もない寒村で、バイクにまたがり疾走する村医者がいる。賈光明さん(66歳)。小児科から産婦人科まであらゆる病気を診察し、結婚式の世話役や人生相談にも乗るなど村人からの信頼も厚い。誕生日を目前にして、体力的に限界を感じる光明。親子四代続く村医者としての誇りと村人を放ってはおけないという責任感が突き動かす。息子が跡を継いでくれさえすれば…。しかし、そうした思いとは裏腹に、息子は収入の良い別の仕事をはじめていた。

先代の遺志を継ぎ村医者に一生を捧げてきた父と、豊かさを求め別の道を歩もうとする息子。黄土の大地に生きる村医者親子の物語を描く。

8年前の放送。舞台となった山西省石楼県西衛村も「近代化」しているかもしれない。賈光明さんも70代半ばになっておられる。息子さんは医者にならず、ビジネスの道に行きたがっていたけれど、その後どうなったのだろう。色々と「問い」が浮かんでくる。

Google Mapで確認しても予想通り内陸部。映像で見る限り生活は豊かではなさそうだった。現在はだいぶん違っているのか。あの村民たちの貧しい生活ぶりは多少とも良くなっているんだろうか。映像から伝わる現実感がモーレツだった。改めて、映像の力を思った。

ほとんどボランティアのような形で診療をする賈光明医師。お金とは縁がない。それに反発し、医者を継ごうとはしない息子。二人の間の確執が悲しい。もっと悲しいのは、賈光明さんがお父様の死を語るシーン。彼の父は文革時代に紅衛兵に虐待を受け、自殺したのだった。代々医者の家系だったのを「反動分子」とみなされたのだ。それを語る時の賈光明医師の顔。思わず涙してしまった。この経験があるから、彼は医者を続けているのだとわかった。彼は息子に言う。「村民のために医療をしていれば、危機時でも彼らが助けてくれる」。実際には彼の父は助からず、紅衛兵の暴力の犠牲になってしまった。その事実が重い。それでも、人を信じ、彼らのために献身的に尽くす賈光明医師の姿。崇高ですらある。

「文革」という歴史上の汚点を未だ「総括」しないでいる中国の指導者たち。大きな「政治」は常に人を踏み潰して行く。己の信念、倫理を貫こうとする者を犠牲にする。それになんのためらいもないし、痛痒も感じないという現実。「Institution vs. Individual」という構図で考えたとき、常に負け戦なんですよね、individualの側は。これが賈光明医師のケースに当てはまらないでいてほしいと、切に願う。