yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

十月花形歌舞伎『GOEMON(ごえもん)石川五右衛門』@大阪松竹座10月11日昼の部

公演の概要を「歌舞伎美人」のサイトから引用する。

水口一夫 作・演出

配役
石川五右衛門 片岡 愛之助
カルデロン神父 今井 翼
出雲の阿国 中村 壱太郎
加藤虎之助 中村 種之助
友市 若山 耀 人 (ダブルキャスト)
友市 菊田 千 瑛 (ダブルキャスト)
石田局/名古屋山三 上村 吉 弥
北政所 市村 萬次郎
豊臣秀吉 中村 翫 雀

フラメンコ 佐藤 浩 希

みどころ
GOEMON(ごえもん)
 豊臣秀吉が天下を統一し、戦乱の世が終焉を迎えて間もなくのこと。秀吉に滅ぼされた明智光秀の家臣・四天王但馬守の娘、石田局は、父の仇である秀吉への恨みを募らせ、復讐の機会を密かにうかがっていた。しかし、遠くイスパニアよりキリスト教の布教のためにやってきた神父カルデロンに神の教えを説かれると、仇討ちが虚しくなり、信仰に傾倒するようになった。いつしか二人は恋に落ち、友市という息子が生まれる。親子三人で仲良く暮らし始めたが、秀吉が切支丹禁令を打ち出したことで、カルデロンは国外に追放されてしまう。家族の仲を引き裂かれた失意の石田局は、秀吉に一矢報いようと、単身、聚楽第に乗り込んだものの、返り討ちにあって絶命する。


 
時が流れ、都で全盛の人気を誇る阿国一座の「ややこ踊り」を偶然見かけた秀吉は、出雲の阿国に興味を持ち、寝所に召し出す。そこに、突如、曲者が忍び込んだとの知らせが入る。なんと、曲者の正体は、成人した友市。両親の仇敵、秀吉と対決するべく、石川五右衛門と名乗る大泥棒となっていた…。


 
五右衛門は、秀吉のもとから阿国を救い出すと、その夫、名古屋山三とも手を組み、三人で共通の敵、秀吉へ立ち向かう約束を交わす。一方、一座の踊りの人気が翳り始めたことに悩む阿国に対し、五右衛門は父カルデロンの母国イスパニアに伝わる踊り、フラメンコを教え、再起へのヒントを与えるのだった。

 

同じ頃、秀吉は、五右衛門が隠れ住むという南禅寺に軍勢を差し向ける。五右衛門を捕える包囲網は、すぐそこにまで迫っていた…。



 
『GOEMON 石川五右衛門』(水口一夫作・演出)は、平成23(2011)年11月、徳島県の大塚国際美術館「システィーナ歌舞伎」の第三回公演で初演された作品です。

 

誰もが知っている稀代の大泥棒・石川五右衛門が、実はスペインの宣教師の血をひく赤毛のハーフで、フラメンコも踊れるという奇想天外な設定が話題を呼び、平成25(2013)年2月には舞台装置を一新して大阪松竹座で上演。そして、ご好評を受け、今秋の「十月花形歌舞伎」で、早くも待望の再演が実現しました。


 
五右衛門を演じるのは、初演からすっかりお馴染みの片岡愛之助。五右衛門の父、カルデロン役に、本公演が歌舞伎初出演となる今井翼を迎え、和と洋が巧みに交錯する大胆な演出と、二度の宙乗りで、客席を席巻する、みどころたっぷりの新たな『GOEMON』にご期待ください。

『GOEMON』第二回公演を2013年2月に観てこのブログ記事にしているので、リンクしておく。

見せ場はなんといっても宙乗り。第一幕の終わりの五右衛門が葛籠を背負っての場面、そして第二幕の最後、五右衛門が鷹に乗っての場面と二回もある大サービス。

別の見せ場はフラメンコ。前回観た折にも感心したのだが、出雲の阿国役の壱太郎と愛之助のフラメンコ相舞踊がその一つ。愛之助は当然(?)だとはいえ、壱太郎はより腕をあげていた。とくにフラメンコを取り入れアレンジした振付けで踊る「ややこ踊り」が秀逸だった。壱太郎の創作ではなく、振付けの藤間勘十郎とフラメンコ監修の小島章司(!)とのコラボなんだろうか。気になる。能のような「舞」が歌舞伎の「踊り」へと変貌へ遂げる歴史的過程をみたように思った。歌舞伎舞踊の発端を偲ばせる舞踊だった。

フラメンコの相舞踊といえば、前回にはなかった成人した五右衛門と幼い友市(後の五右衛門)とのものもすばらしかった。この日の友市は菊田千瑛君。大器の予感。

もうひとつの見せ場は前回にも感動した三味線とフラメンコ・ギターとの競演。それぞれに語り――長唄とカンテ――がつく。

この「歌舞伎」の最大の売り物だと思われる「和と洋との融合」がとにかくすばらしかった!破綻することの多いこの類いの試みがこのように成功しているのをみるのは、実にワクワクする体験だった。

和と洋の「音楽」の競演はフラメンコと三味線のコラボのみではなかった。舞台上手の御簾に隠れた上部には歌舞伎常套の義太夫が、そしてその下部のこれまた薄幕で隠された場所には室内楽のチームがそれぞれ陣取って、伴奏を担当していた。以前に気づかなかったのが迂闊。

また宙乗り場面ではバックにラテン音楽が鳴り響き、それに合わせて会場左手上部にネオンサインで「GOEMON」の文字が浮き上がる仕掛けが併用されていた。舞台上に組まれた躯体の十字架の照明と呼応しあって、なんとも感動的。それにこの異質なもの同士の組み合わせになんの違和感もないところに唸った。違和感がないどころか、互いの個性を際立たせつつもみごとに融和していた。

なんといっても、作・演出の水口一夫の傑作。役者たちの代表作になるのは間違いないだろう。愛之助だけではなく、上村吉弥、中村翫雀(来年1月の新春公演で四代目鴈治郎を継ぐ)、市村萬次郎といった芸達者に若手の中村壱太郎、中村種之助等が花を添えていた。とくに壱太郎の進境ぶりには、改めて目を見張った。母方の曾祖母は吾妻徳穗で、彼自身も先月七代目家元吾妻徳陽を継いだという。吾妻徳穗の自伝をずいぶん前に読んだが、その天衣無縫ともいえるいきざまに圧倒された。彼女はあの世紀の美男子と謳われた十五代目(市村羽左衛門)の娘。ということは壱太郎にも何分の一かは西洋人の血が入っている。そして祖父はもちろん!現坂田藤十郎(三代目鴈治郎)。

今回の公演の売り物の一つだった今井翼の起用は成功とはいえなかったように思う。前回の尾上松也の方がはるかに良かった。フラメンコの部分はともかく、台詞回しは歌舞伎役者に交じるとかなり違和感があった。まるでタカラズカ。しゃべらなかったら良いんだけど。和と洋とのコラボに重点をおくなら、大衆演劇のトップクラスの役者を持ってきた方が、ずっと成功しただろう。