あんまりだと怒っている。7月6日(土)の午後1時からのものを観たのだが、東京文化会館へ到着した途端、この張り紙をみてがっかりした。私が買ったのは4階席だったから「口惜しい」感は2万2千円のチケットを買った人よりは幾分少なかったかもしれない。でもやっぱり怒っている。フェアじゃないじゃありませんか。「hana★hana_blog」という方のブログにも同様の思いが綴られていた。多くの人が同じ思いを共有したに違いない。私としては「騙された」(I have been cheated)という思いが強くしている。
主役をやるはずだったダンサーが足首の手術後の経過が良くなくて、そのための代役だったということなのだが、とっくに代役を予定し、稽古もしていたという。前売りの段階である程度予測可能だったのだろうから、その断りをしておくべきだったのではないか。
先月同じく東京文化会館でみたパリオペラ座公演では私の行きあわせた主役のダンサーはトップではなかったけど、それでもすばらしかった。でも昨日のアリス役のチェ・ユフィ(崔由姫)という踊り手は、アリスがはまり役とは到底いえなかった。パリオペラ座と比べると、トップクラスのダンサーの層が薄いのかもしれない。
アリスという役は非常に難しい役である。「子供でいながら大人のような、可愛くあるようで憎たらしくもあり、可憐であるはずがブスで」ってな具合に中途半端な女の子なのである。ユフィという人、そのあたりの解釈がまったく出来ていなかった。あくまでも可愛くみせようとしていた。ルイス・キャロルの諧謔精神というか、英国人特有のサタイアの精神を理解していなかった。それは英国で生まれ育った人には生来的に身についているのだろうし、また理解もできるのだろうが、外国人がそれを表現するには、残念ながらほとんど不可能なのではないか。『白鳥の湖』なんかの方がある意味、外国人にも演り易いに違いない。ストーリーもテーマも人物も普遍的だから。でもアリスとなると、「ちょっと待て」となる。
それと外見もやっぱり「?」がいくつも付いた。アジア人にこれをやらせるのは無理があるでしょう。金髪(もしくは栗色の髪)に碧眼というイメージがアリスにはある。それを黒髪の肌の浅黒い人が演じると、かなり白けてしまう。この演目はそれくらいアリスの外見が大きく左右する演目なのだ。
ハートの女王、料理人の二人のちょっと年配の女性ダンサーたちはよかった。アリスとは対照的だった。男性陣は白ウサギをはじめ帽子屋、ネムリネズミたちが良かった。とくにハートの騎士を演じたダンサーは跳躍、表現力共にすばらしかった。
ただ全般的にパリオペラ座の踊り手たちと比べると、力量不足な気がした。私がみた公演がたまたまだったのだろうか。何にしてもこういう代役を立ててくるということになると、英国ロイヤルバレエ団自体の信用がなくなることになるだろう。由々しきことである。
あんまり腹が立ったので、カーテンコールを待たないで会場を後にした。