yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『高崎情話』たつみ演劇BOX@新開地劇場9月25日

このお芝居はたつみさんのお父さま、小泉のぼるさん最晩年の書き下ろし創作だそうです。とてもよく練られた内容で、大衆演劇の世話物狂言のエッセンスがすべて揃っていました。さすがですね。観客がどこで泣き、そして笑うのか、どういう人物、設定に感情移入するのかを計算して組み立てられているので、世話ものといえど、下手にお涙頂戴だったり、説教調だったりといったところはまったくありませんでした。きわめて洗練されていて、良い意味で「大衆演劇的泥臭さ」が臭ってきません。もっともこの劇団で、たつみさん、ダイヤさんという都会的な座長さんたちが演じるのですから、古い芝居でもベタベタはしていません。古典的内容でありながら、演者の体質を反映してどこか新しく、爽やかです。宗家(嵐劇団)のお芝居の格調を保ちつつ、それが若いたつみさん、ダイヤさん、そして小龍さんという役者の身体に受肉化されることで、表現として現れるものは当然現代的です。以下がそのプロットです。

茶店の前、旅館要屋の女将(小龍さん)が土地のやくざ一味に絡まれている。やくざの親分(宝良典さん)は要屋を譲るように女将を強迫するが、女将が応じないので殴ったり蹴ったりの狼藉を働く。茶店から手伝いの娘(満月さん)が出てきたので、その場は一応引き上げる。女将は娘の誘いに乗って、茶店の中で休むことにする。二人が茶店に入った後、やくざ一味が再び現れる、女将が落とした要屋の印判を拾う。それをつかっての悪巧みを思いつく。

それを物陰からみていたのが風来坊の渡世人(たつみさん)。やくざ一味が悪巧みを企んでいると睨む。ただ空腹で仕方ないので茶店の床几横で昼寝することにする。

そこにやってきたのが盲目の三味線弾きが二人(ダイヤさん、愛飢男さん)。三味線の師匠、その弟子のようである。二人して江戸までの旅をかけている。床几に座り、団子と茶を娘に注文する。ここからが抱腹絶倒(?)シーンになります。目をさました渡世人(ここからがたつみさんの独断場。いろいろ飢男さんにイタズラをして観客を笑わせます)、娘が床几上に置いていった団子、それに茶を飲み食いしてしまう。盲目の三味線弾きは二人とも相手が勝手に団子、茶を二人前独り占めしたと思い込む。師匠は弟子に嘘をつくなと怒る。弟子があくまでも自分が食べたのではないと言いはるので、怒って先に行ってしまう。途方にくれる弟子。

そこへ例の渡世人が出て来て、自分がすべて飲み食いしたのだと謝る。怒る弟子、すぐに一緒に師匠の後を追いかけてそれを話してくれという。「あわてるな」と制する渡世人。すぐに追いつくことが可能だから彼の身の上を話してくれという。しぶしぶ身の上話をする弟子。

それは涙なしにはきけない悲話だった。わずか五歳で両親ともに死に別れ、十歳の兄とともに旅をしていたが、目のみえない弟が足手まといだったのかその兄に捨てられてしまったこと(それを聴いて、はっとする渡世人)。その彼を拾ってくれたのが師匠だったこと。三味線を稽古し、将来は盲人の中では最高位の検校といわないまでもせめて別当、勾当、座頭のどれかになりたいと願っていること等を話す。それになるにはいかほどのお金がかかるのかと問う渡世人。弟子は「百両」と答える。「俺がその百両、作ってやろう」と申し出る渡世人。一日で調達するから、何処かで休んでいるようにと弟子に言う。そこへ渡世人顔見知りの鳥追い女(ルビーさん)が出て来て、彼に三両を貸す。また茶店からは旅館要屋の女将も出てくる。渡世人は弟子の案内を女将と鳥追い女に頼んで、自分は賭場にでかける。

女将は旅館に戻っている。そこに賭場で五十両勝った渡世人がやってきた。話を聴いた女将は彼に五十両を渡し、百両にするようにという。辞退する渡世人だが、最後は受け取る。

やくざの親方一味が押し掛けてくる。拾った印判を押したニセの千両の借用書をみせて、千両出せ、いやなら旅館を取り上げると脅す。初めて印判をおとしたことを知る女将。驚き嘆く。出てきた渡世人が印判の顛末を女将に話す。渡世人はドスを親分の首もとに突きつけ、印判を返すように迫る。仕方なく返す親分。渡世人は弟子に百両を渡し、自分が江戸まで送り届けてやると申し出る。

腹の虫が収まらない親分、子分を引き連れて渡世人と弟子の二人連れを待ち伏せている。やってきた渡世人と弟子。渡世人は弟子を高い場所に座らせ、自分は一味の中に入って闘う。弟子には三味線を聴かせてくれと所望する。舞台前面では立ち廻り、バックではダイヤさんの三味線演奏(とてもお上手でした!)。親分を残しすべて斬り殺す。最後に親分との一騎打ちになるが、首と脇腹を斬られる。返すドスで親分を斬り殺す。

いまや瀕死の傷を負った渡世人。あやぶんだ弟子が弾くのを止めて渡世人に近づこうとする。そこへ女将と鳥追い女がやってくる。鳥追い女に弟子を預け、江戸まで連れて行くように頼む。二人が去った後、女将に弟子が実は自分の弟だったと告白する。涙する女将。そこへ鳥追い女の手を振り切って弟子が駆け戻ってきた。そして渡世人の亡骸に向かって彼が兄だと分ったという。何も恨んでなんかいないとかき口説く。涙にくれる女将と鳥追い女で幕。