yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

純座長頑張る『浪花恋暦』桐龍座恋川劇団@新開地劇場8月27日

昨日、一昨日と純弥さんがゲストだったのですが、席をとるのが難しいと分っていたので観劇は見送りました。地方興行の折の方が幾分かましでしょうから、機会があれば是非観劇したいと思っています。

24日の口上で純君が純弥さんが帰られた後の観客数を心配しておられましたが、杞憂でしたね。満員でした。私は用があり10分遅れて到着したのですが、すでにほとんど席は埋まっていて、ようやく一席見つけて座ることができました。入り口で切符を受付の方に渡していると、楽屋口へ純弥さんがお子さんたちを連れて入られるのに遭遇しました。感じの良さはいつもと同じ、ほんわかした気分になりました。今日は残られて、いろいろアドバイスをされていたのだと思います。今月の公演、照明、それに例の純弥仕様の(?)舞台背景の三段の階段が以前と同じ高レベルなのに感心したのですが、今日は一段とパワーアップしていました。純弥さんの影を感じました。

今日のお芝居、『浪花恋暦』、純弥さん主演で二度観たことがあります。純弥さんの役を純君が、純君がしていた役を心哉さんが演じられました。あとの配役はほぼ同じ。丁稚役の白峰さんが笑いをとるのも同じでした。恋人の別れがメインプロットになっているのですが、そこに笑いが組み込まれたいかにも上方風の「洒脱な」お芝居です。こういうの、大好きです。

照明はとにかく半端ではなく豪華でした。23日の舞踊ショーの折にも今まで観てきた日本の演劇の中で文句なしに最高峰のものでした。歌舞伎は照明にはそれほど気を遣いません。江戸時代には薄暗い小屋でやるので、ローソクの灯りが効果的につかわれたのでしょうが、現在設備の整った劇場でふんだんに灯りを灯すことことが可能になった分、照明の工夫は後退しているように思います。オペラ、バレエの照明をもっと研究してもらいたいなんて思う時もあるくらいです。それに比べると、大衆演劇の舞台では照明が必須ファクターになっています。舞踊ショーでは必然的に照明の良し悪しがパフォーマンスの質そのものに影響するからでしょう。

お芝居の筋自体は悲劇とよぶには他愛ないものです。というか「深刻に」演じると逆に足を掬われる類いのものです。山をあげて「感情移入」を目一杯入れるというのが大衆演劇的演じ方なのですが、それを純君は至極「アッサリと」演じられました。でもアッサリ演じる方がどれほど難しいことか。純君、良い役者になられましたね!この使い分けをするのが至難の技だと分っているだけに、感心ひとしきりです。

舞踊ショーではさらに感心させられました。今日は純君が女形で「出ずっぱり」ということだったのですが、文字通り、他の役者さんがソロで踊るところに、途中から純君が参加し相舞踊になるというパタ—ンですべての舞踊が構成されていました。そんなに頻繁に出てきても手抜きすることなく、一つ一つの舞踊にドラマを立ち上げられました。再度思いました、恐るべし若干21歳の役者、恋川純!

心哉さん、風馬さんも純君と張り合いながら、絶妙のコラボを演じられました。いつまでも観ていたかった。

女性陣はあいかわらず完璧です。これもこの劇団の強みです。それに男性座員さんが二人増えていました。とはいってもその一人は以前におられた千弥さんという方ですが。お二人とも役者歴が浅いわりに、きちんと演技されますし、踊られます。この劇団で残る座員さんのレベルはきわめて高い。稽古のあとがはっきりと分ります。それは純弥さんの創られた厳しい稽古という「伝統」をきちんと純君が守っておられるからでしょう。

この劇団の強みはゲストを多用しないところです。純弥さんが来られたのが唯一の例外です。若丸さんのところも、劇団美山さんも「ゲスト」に頼らない劇団です。押し掛けてくるのは拒めないのでしょうが、それもほとんどありません。そこに座長の心意気、矜持を感じます。ゲストを呼んだり、ゲストに行ったりするのはやむを得ない事情もあるのでしょうが、あまりそれに頼ると舞台の質が落ちます。そんな暇があるのなら、他ジャンルの芝居をみる等に時間を費やすべきです。そうしないと大衆演劇が人口に膾炙しているレベルを超えることは永遠にありえないでしょう。

いろいろな点で、都若丸さん、そして彼の率いる都若丸劇団との共通点を強く感じました。去年12月の「新開地劇場年忘れ座長大会」のDVDを観たのですが、そのときのお芝居での若丸さんと純君の息のあった丁々発止の演技を思いだしました。若丸さん演出で、若丸さんが主人公の生臭坊主、純君がその愛人を演じた芝居、抱腹絶倒ものでした。純君の「悪い女房」、本当に上手かった。姫京之助さんがその連れ合いだったのですが、これも上手かった。もちろん若丸さんの坊主も松竹新喜劇ばりでした。春之丞さんの馬抜けた奉公人も秀逸でした。伍代孝雄さんの、若丸さんにいい寄るバカでかい後家も気持ち悪く可笑しかった。おそらく今までの新開地年末の座長大会の中で最も面白い芝居だったに違いありません。今年はぜったいに見逃さないぞ!今年も若丸さんの演出なんでしょうね。そう願います。

明日のお芝居は『夜鴉銀二』。舞踊ショーでは純君が立ちの七変化、心哉さんが女形の七変化を踊るとのことでした。明日も間違いなく大入り2枚でしょう。