yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『二人忠治』桐龍座恋川劇団@新開地劇場8月18日昼の部

この日も恋川純弥さんが「ゲスト」として出演。「引退後」に純弥さんがゲストとして他劇団に出演するのをみるのは今回が五度目。そのうち一度は引退後まもなくもとの恋川劇団に客演されたもの。いずれもどこか遠慮気味の感じがしていた。それはLINK公演にもいえたように思う。性格が控えめな所為かもしれない。でも今回はどこか今までとは違っていたような。もっと前に出て、しっかりと自己主張されていたように映った。なんといってもご自分が「育て上げた」劇団なんですものね。弟の純さんが張り合えるだけの力のある役者に成長されたこともあるかもしれない。今まで純弥さんの舞台にはさほど色気を感じなかったのだけど、今回は強く感じた。もちろん純弥さんのことだから、アグレッシブに「どうだ!」という趣きではない。でも以前よりもはっきりと自己存在をアピールしている感じがした。そこにこの三年間の彼の積み重ねて来た時間の重みを思った。みていてちょっとほろっとしたくらい。

お芝居はそんなに「山を上げる」ことは、前からされない。それでも何かが変わっていた。純さんがしっかりと彼に絡むことができる役者になったこともあるだろうし、他座員も力をつけてきているからかもしれない。その安心感が彼が本来もっている存在感を、自然に顕すことを可能にしたのかもしれない。自然体なのに存在感があったんですよね。

舞踊ではそれをより強く感じた。やっぱり上手い!以前はそれが強烈なアピールとしてこちらに迫ることはあまりなかったのだけど、この二回は違っていた。自己のスタイルをひとつの完成体として提示するのではなく、まだまだ完成途上にあるものとして、出しておられたように思う。つまり老成した踊りではなく若手の踊りですよ。「まだまだ伸びしろがありますよ、僕は」と主張している、そんな気がした。これはフリーとして活動してきたことが反映しているのかもしれない。劇団ヒエラルキーのトップにいる座長では考えられないことだろうから。

翌19日は彼が退団されてから初めてになる「恋川純弥誕生日公演」。そういえば退団される前年の8月19日の誕生日公演は亡くなられたNさんと一緒に観たんだと、しんみりしてしまった。Nさんは純弥さん、そして純さんをひいきにしておられた。19日は観に行きたかったけど、席の確保が難しそうだったので、初めからパスしている。16日の純さんの「座長襲名一周年記念」も同じ理由でパス。来年はあらかじめ準備したほうがいいかも。

<お芝居>
『上州土産百両首』もそうだったけど、純弥、純さんお二人がいればこそ、きれいに「決まる」お芝居、『二人忠治』。期待通りだった。真忠治に純弥さん、偽忠治を純さん。他劇団でもみたお芝居。伝説の国定忠治の活躍を描くのではなく、彼の逃避行をネタにしたいわば「忠治外伝」。もちろん喜劇。純さんも力を思いっきりお兄さまにぶつけておられた。純弥さんもそれを受けて、さながら兄弟の一番勝負。わくわくした。純弥さんの本もの。すっとしたイイ男。ニンにピッタリはまっていた。なんでも今回のゲストに当たって5キロ減量されたとか。純さんはオモシロメイクを存分に使って、アドリブ満載の偽もの。純弥さんにはこの偽者はムリですね。それぞれが自然なかたちで納まっているので、観ている側のストレスもきわめて少なくてすむ。その分、思いっきり笑えたし、楽しめた。

番外なのだけど、「口上」が良かった!久しぶりの純弥さんの口上。ジーンとしてしまったのは、私だけではないだろう。

演出面では照明に感嘆した。最強ものだった。舞台上に二列、バックに床立式のもの左右に二体。サイドが今までみたことのない凝り方。今までにみたことがない立体感。上下、斜め、それも三、四段構え。劇場後方から左右、斜めのライト。ことばを呑んだ。それぞれが場に応じて使いわけられ、みごとに効果を発揮していた。いくつかは凝り性の純弥さんの「持ち込み」だという。純弥さん、ただスゴイ!

<舞踊ショー> 間違いあればご容赦。

第一部
群舞    「紫に月」
男性陣は袴姿で。凛として格調高かった。

純    「沓掛時次郎」
所作が決まっていた。Nさんがご覧になったら涙を流して喜ばれただろう。

男性陣   「甲州街道」

女性陣+千弥  「よさこいマンボ」

純弥    「傘ん中」
渋い色気。

ラスト   「愛と欲望の日々」

第三部
群舞   「天城越え」

女性陣・風馬・千弥・純  ?

心哉  女形  「百夜月」
色っぽかった。小町伝説を使った歌詞?

純弥  女形  「純情歌」
薄クリーム色の着物に扇子を持って。

純   「Love Story」
白地に金の刺繍をほどこした着物で。
照明がこの衣装に映えてすばらしかった!

風馬  「一厘のブルース」
黒着物にえび茶羽織。風馬さんにしては渋い。それに銀髪なんですよ。傘を持って。

純   女形 「おりょう」
激しい女を全身で。

相舞踊  純弥・心哉  「唐獅子牡丹」
珍しい組み合わせ?

千弥  「来島海峡」

心哉   「Wild Rush」

純    「冬牡丹」

純弥・純  「スイマーよ」
純弥さんは黒、純さんは白着物で。グリーンの放射ライトが効果的に使われていた。ホント、照明懲りまくり!

純   「あすか」?
棒を持って。鬘が飛ぶハプニングが。

歌   心哉   「あなたの街角」
千弥さんたちが舞踊を。心哉さんの歌、初めて聞いた。

純弥   「銃爪」
照明が全開だった!

風馬   「宙船」

兄弟競演三味線  「望郷じょんがら」
圧巻だった。純弥さんが修錬を積まれ、それが実っていることを実感した演奏だった。

この贅沢な構成!感激をあらたにした。

純弥さんゲストの日に二回行ったことになる。いずれも補助席の出る満席。最初補助席に座っていたら、ラッキーなことに途中で普通の席に案内していただいた。ありがとうございます。