yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『大当り高津の富くじ』都若丸劇団@明生座11月23日夜

松竹新喜劇のオリジナルを若丸さん仕様にした芝居でした。もともとは落語で、落語オタクのつれあいが、先日この演目が貼り出されているのをみた途端に「あっ、落語をやるんだ」と言ったので、ネットでも検索してみました。落語の内容とはずいぶんと変えられていたようだけれど、オチの部分はそのままでした。

第一場 髪結い床
主人公は浪速の紙問屋「亀屋」という大店の若旦那、伊之助(若丸さん)。かっては栄えていた亀屋の商売は今はあがったりで、500両の金がないと店は人手に渡ってしまう。亀屋の御寮んさん(月宮弘子さん)は後添えで、伊之助とはなさぬ仲である。それもあって伊之助は家を出て、大工の棟梁、辰五郎(城太郎さん)の家に居候している。毎月継母から辰五郎にまとまった金子が振り込まれていると思いこんでいる伊之助は湯水のごとくお金を使って放蕩三昧。その後始末を辰五郎夫婦がしているが、伊之助はそれを知らない。

おりしも髪結い床で御寮さんとその息子(つまり伊之助の腹違いの弟)、大工棟梁の辰五郎、その弟子(剛さん)が出会い、話をしている。そこで亀屋の窮状が分かる。髪結いは富くじも売っていて、亀屋の御寮さん、その息子、大工棟梁の辰五郎は富くじを買う羽目になる。

さて、時が変わり、髪結い床に伊之助がやってくる。彼は今日も今日とて「人助け」と称して、やくざ(舞斗さん)に絡まれていた女義太夫語りの窮地を金100両で救う。このときに舞斗さんの歌舞伎の悪役ばりの化粧がおかしかった。声を聞くまで舞斗さんとは分かりませんでした。それをまじまじとみた若丸さん、「坂田の金時みたいやな」。調子に乗った伊之助。今度は、店の金を使い込んで心中しようとしていた手代と芸者にも金100両を約束する。底なしに人が良いのである。

人助けをしたと良い気分で帰ろうとする伊之助。髪結床の亭主が富くじを買ってくれと頼むので、一枚買うことになる。ここでの星矢さんとのやりとりが笑わせます。オモシロメイクの星矢さんが「わても困ってるから、助けてください」と懇願すると、若丸さんが『舞踊ショーの顔やったら考えたるわ」と応えます。「なにゆうてまんのん。この顔、舞踊ショーより時間かかってまんねんで」と星矢さん。笑えました。

第二場 辰五郎宅
辰五郎の家には茶屋の女中が伊之助の茶屋遊びの代金を請求に来ている。なんとか誤摩化そうとする辰五郎夫婦(妻はひかるさん)だが、とうとう伊之助に実情を話すことになる。というのも、先日助けた女義太夫と心中のしそこないが、亀屋にいっても金を調達してもらえなかったと訴えにきたからである。実態を知って驚く伊之助。こうなれば富くじにあたるしかないと神頼み。神社へ駆けつける。

この場面での棟梁の女房役のひかるさんの演技が光っていました。実直で優しい人柄がよく出ていました。ゆかりさんは女中役だったのですが、若丸さんとの掛け合いが笑えました。「一体いくつやねん」と聞く若丸さんに「十八」と応えるゆかりさん。「見えんな」と若丸さん。この掛け合いは下手の目立たないところでのもので、それも笑えました。

第三場 高津神社前
ここが一番の見せ場。一千両の富くじに当たったことを知った伊之助の喜ぶ様は一見の価値あり。神楽の音頭に合わせて踊り狂うのですが、天下一品の芸でした。伊之助のくじが当たったことを知った辰五郎、その女中(ゆかりさん)たちも神楽に合わせて踊るのですが、これもそれぞれの芸の持ち味がよく出たものでした。

伊之助は義太夫大夫にも手代たちにも約束通りお金を渡し、辰五郎への「借金」も返し、残りの金で亀屋の身代をその金で救うことにする。そしてこれからは放蕩をやめて、亀屋に帰ることを継母に約束する。

これほどの質の高い喜劇がみれるとは、この日のお客さんたちはずいぶんと得をしたものです。お芝居の内容もそうなのですが、随所随所のアドリブが光っていました。若丸さんのアドリブに当意即妙に応える剛さん、星矢さん、舞斗さん、ひかるさん、ゆかりさん、それに若い座員さんたち。それぞれがきちんとツボにハマっているのです。こういう劇団は初めてです。

翌日は朝から授業なので、三部の舞踊ショー(女形大会)はみないで帰りました。残念です。祭日とはいえ夜の部だったので、この前の日曜日の昼の部のようなトリプルではなかったのですが、まちがいなく夜だけでダブル(トリプルだったかも)でした。昼もおそらくトリプルだったのでしょう。普段から夜もダブルの大入りのことが多いのですが、当然ですね。

いつ行ってもほぼ全席に予約の札が貼ってありますが、キャンセルする人もいるので、当日予約なしでもどこかに座れますし、補助椅子も出ます。いつも熱気で溢れていて、その場にいるだけでそれに感染します。観客層も他の大衆演劇のそれよりもはるかに良いように思います。