アメリカ人は楽天的、前向きな人たちである。とくに日本人と比べるとそれが痛いほどよく分かる。ところがである、今度1年半ぶりにやってきたアメリカは、今までとちょっと違った感じがした。
あの3年前のリーマンショックの9月15日にも私はフィラデルフィアにいた。勤務先の同僚が「ひどいことになっているでしょう」とメールしてきたときに、「全然その気配はありません」と返事したほど、アメリカ人の消費活動への影響は微細だった。だのに、今回驚いたことに以前の元気、活気がない。どうしちゃったんだろう、アメリカ。
ホテルで見放題をいいことにCNBCをつけっぱなしにしているが、アグレッシブな放送姿勢はそのままだけれど、中身は悲観論が大勢を占めているのだ。それもほとんどが経済の先行きに対する絶望に近いコメントが多い。この番組をみて元気をもらおうと思った思惑がはずれてしまった。
ほとんどの論調が「オバマ非難」であり、それも彼の「大きな政府」政策への酷評である。アメリカ人からみれば福祉にお金をつぎ込むのは溝に捨てるようなもの(ちょっと言い過ぎだが、でもこれに近い)なのだ。だから一昨日に出た雇用統計が予想以上に悪かったということで、CNBCに登場するコメンテーターは非難の大合唱。そしてオバマ大統領が打ち出した「教育」分野での雇用創出という案は即座に一蹴されていた。
アメリカ人がこれほど感情的になっているのを初めてみたので、びっくりである。でもメディアをはじめほとんどの人が悲観のどん底に来たときがチャンスであるのは間違いない。だから今がまさにそのチャンスの時かもしれない。
9月11日はもうすぐである。10年経った。あのときも私はフィラデルフィアだった。博士コースの最後の仕上げ中だった。あのときの暗さ、やりきれなさと比べると、まだ今度はなんとかなるような、そんな思いをアメリカ人は持っているのではないかと思う。だからこの節目を契機にして、また元気なアメリカに戻って欲しいと切に願う。