午後2時に始まった。2000人収容の大ホールがほぼ満員で、それでいてとても静かだった。日本人の観客は海外でもマナーが良いと嬉しい評判をとっているけど、まさにそのとおり、とても行儀がよくて快適に鑑賞できた。多分この地域(阪神間)の客層が良いこともあるかもしれない。クラシックの演奏会の客は世界共通、似ているのだけれど、日本の場合はとくに知識層が多いように思う。この日の観客もしかり。でも今までみてきたクラシック音楽の日本公演よりも若い人が少ない気がした。中年層が、それもカップルが圧倒的に多かった。
大阪のシンフォニーホール、東京のサントリー・ホールや他のホールよりも欧米のコンサートホールにより近いと思ったのが、フォワイエの天井の高さである。ずーっと高く吹き抜けていて壮観である。多分欧米を強く意識しての建築だろう。そしてもうひとつ、欧米に近いと思ったのがインターミッションのときの飲み物、とくにワイン、シャンパンの販売で、客たちがワイングラス片手に談笑する図はまさに欧米のコンサートでよくみかけた光景だった。そこに集まった人たちのかなりが欧米でのコンサートに出かけたことのある人たちだったのではないかと思った。インターミッションがあまりにも短い(20分)点は、30分以上ある欧米とは違っていたけれど。
ホールの造りも今までの日本のコンサートホールのどれよりもヨーロッパのオペラハウスに似ているけれど、ウッドで覆われているのでずっと温かみがある。アコースティックスも思ったよりよかった。このセンターが設立された5年前に、芸術総監督の佐渡裕さんのファンということでで会員になりながら、途中にアメリカにしばらく行ってたりして結局今回まで行く機会がなかった。2年前に神戸から宝塚に引越しをしたのでより近場になったこともあり、これからどしどし出かけたい。
チケットがとにかくリーズナブルである。A席が4000円なんて信じられない。シンフォニーホールならこの倍はするだろう。それに一回り小さいシンフォニーホールよりも劇場としては優れている。中ホール、小ホールもあって、いろいろな公演に対処できるようになっている。
第一部は最初にバロック・オーケストラの演奏が3曲入り、4曲目、5曲目がカルミニョーラさんのソロが加わったヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲だった。
オーケストラの演奏はその古楽器のためかすこし地味な感じだった。バイオリン7人、チェンバロ奏者1人、ビオラ2人、チェロ、ベースそれぞれ1人、リュート1人の編成だった。リュートが入っていたのには驚くと同時にとてもうれしくなった。ほらあのシェイクスピアの時代の楽器、ギターほどクリアな音色ではないけど、とても味のある音を出す楽器だから。
第一部最後にカルミニョーラさんが登場、オーケストラをバックにヴィヴァルディのバイオリン協奏曲を演奏、インターミッションをはさんでの第二部ではヴィヴァルディの『四季』を演奏した。彼のバイオリンはストラディバリウスでも特別に貴重なものらしく、音色が澄んでいてすばらしかった!ちょっと地味に思えたオケの演奏が彼の演奏が加わることで、一挙に華やかなビビッドなものへと変化した。
あくまでもクリアで明るいイ・ムジチ合奏団は「合奏」なのでこれと比較するのは無茶かもしれないけど、バロック時代のヴィヴァルディはこのバロック・オーケストラに近いものだったのかもしれない。余韻の残る演奏だった。アンコール3回を律儀につとめてくださった。
欧米のオーケストラによくいるアジア系(ほとんどが日本人)のメンバーがひとりもいなかった。たぶんみんなイタリア人なのではないか。
もうひとつ、ミーハー的感想。カルミニョーラさん、ハンサムだった!オケ構成員もみなさんそうだったけど。