yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

赤星マサノリ×坂口修一 二人芝居 『東京物語』@岸和田浪切りホール2月6日

先日観た『ハイ・ライフ』といやでも比較してしまう。『ハイ・ライフ』にひどく動揺させられたあとに、この作品を観るとあまりにも生温い。ほとんど感動なし。題材、プロットからしてこちらに迫って来るはずだったんですけどね。がっかり。

以下がプロダクション。

脚本:竹内銃一郎
演出:笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー)

出演:赤星マサノリ(sunday)・坂口修一

関西小劇場を代表する俳優による極上の二人芝居が4度目の全国ツアーを行う。
これまでに、コメディ作品「男亡者の泣きぬるところ」や、
桂枝雀の落語「貧乏神」を、現代の二人芝居にアレンジして上演。
昨年は、ピースピットの主宰・末満健一の錬金術を舞台にしたヒューマンファンタジー
「Equal-イコール-」で全国5都市を回った。
4作目となる今回は、想像力を強く刺激する洗練された演出と造形力に定評があるエイチエムピー・シアターカンパニーの笠井友仁を演出に迎え、竹内銃一郎の「東京物語」に挑む!

あらすじ
とある国のとある刑務所。「革命家」ブレーキと「オカマ」のオリーブは退屈な獄中生活を紛らわすために毎夜、映画の話を繰り広げる。
今日の映画は小津安二郎監督の「東京物語」。
オリーブが夢中になって映画の話をする中で、ブレーキは脱獄計画を持ちかける。
しかしオリーブは・・・。
運命的な出会いの二人が巻き起こす、愛と友情の逃走劇。

これって、映画『蜘蛛女のキス』のパクリじゃないの?と思ったのが最初の感想。この芝居の作家、竹内銃一郎がおそらく『蜘蛛女のキス』を下敷きに、『東京物語』を無理に入れこんだのでは?

『蜘蛛女のキス』はずいぶん前に同僚に勧められてDVDレンタルして観た作品。とてもよく出来ていた。とくに脚本。それと主演のウィリアム・ハートのオカマ振りにも感心した。

この『東京物語』、ディテールのほとんどが『蜘蛛女のキス』に連動して進行。モリーナというオカマが同じ監獄に収監されている政治犯のヴァレンタインに話して聞かせる映画が『東京物語』でないという点。たしかマフィアを主人公にした映画だった(間違っているかも)。

借用というか本歌取りを際立たせる工夫はまったくなし。まるで竹内の独自作品のように話が展開するのに、違和感を覚えた。

くわえて、『東京物語』を使う意味が分からなかった。『蜘蛛女のキス』でモリーナがヴァレンタインに話して聞かせる映画は、ヴァレンタインの政治運動の空虚さを表象する役割を負っていた。そしてそれが最後の彼の無意味な死として完結するんだけど。じゃあ、『東京物語』は何のために使われたのか。思い当たる節もないではないけど、それじゃあんまり語るに落ちる。竹内の小津へのただならない「思い入れ」に起因しているのでは?

役者さんたち、赤星マサノリ、坂口修一の両氏、健闘していた。でもなにか物足りなさが残るのは先週あの過激なそして切実な『ハイ・ライフ』を観てしまったから。あのレベルの高さ!役者さんたちの熾烈な闘いぶりをみてしまうと、なにをみても生温く感じてしまうのかも。