- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/04/19
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この発案、先日(1月)歌舞伎座でみた玉三郎の「蜘蛛の拍子舞」を、そして海老蔵の「はなさかじいさん」を連想させた。欧米の今のモダン・バレエの挑戦をみたら、三島がナンて言うだろうなんて、考えてしまった。とくにパリ・オペラ座のバレエ。リアルな装置もアブストラクトな装置も効果的に使われているから。
彼は続けて曰く、「今みたいな十八番めかした装置でなくて、グッとリアルにしたら、案外面白いと思うんだ。そのためには歌舞伎の設備(当時の歌舞伎座)では不足で、あれじゃ、近代的照明は十分出来ないし、本当にリアルな装置も組めないけれど....。『天守物語』などああいうものだが、あの道具はかなりリアルでしょう」。これはまさに新歌舞伎座での玉三郎の『天守物語』で実現している。それに玉三郎演出の昨年12月歌舞伎座での『幻武蔵』での装置を思わせた。歌右衛門との対談での三島のアイデアが、奇しくも玉三郎によって実現するとは。伝統が連綿と続いている中で、鬼才/天才によって実験的試みが実現することを知らしめるもの。
歌右衛門が泉鏡花の三部作、『天守物語』、『夜叉ヶ池』、『海神別荘』に出ていたのを、この対談で初めて知った。この点でも玉三郎は歌右衛門の、そしてあえていえば三島由紀夫の「後継者」ということになるかもしれない。