yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『羽衣』 in「春日若宮おん祭」@春日大社若宮 12月18日

春日大社の摂社、若宮のおん祭。その際に奉納された能。「後宴能」という。「若宮おん祭」とはなんぞや?時は1136年、疫病蔓延による万民の窮状を救済するために、若宮の霊威にすがろうとして祭礼を催したのがその起源という。以後、870年以上にわたって続いてきている。「国指定重要無形民俗文化財」になっている。

今年は12月15日から18日までの開催。毎日様々な神事が奉納された。最終日の今日は能が奉納された。

「春日若宮おん祭」も初めて、もちろんそこで演じられる能を見るのも初めて。以下にその内容と演者を。

場所  春日大社参道 春日大社若宮御旅所
名称  後宴之式能
★能 羽衣 金春穂高 原大
 笛 貞光訓義 小鼓 荒木賀光 大鼓 井林久登 太鼓 前川光長
★狂言 因幡堂 茂山あきら 網谷正美
★能 黒塚 櫻間右陣 原大
 笛 貞光訓義 小鼓 荒木賀光 大鼓 井林久登 太鼓 前川光長

シテの金春穂高さん、背が高く大柄な方なので、豪奢な衣装が映えた。極寒の中、一時間も踊り続けるわけで、かなりの体力、胆力が要る。いささかの澱みも弱りも見せずに、折り目正しく舞われた。

最初のシーンで、ワキに「羽衣を返したらそのまま行ってしまうのでは」と詰問されたシテ。キッとして「神なる身、そんなことがあろうはずもない」と答えるところ、切なくも哀しい。

一転、羽衣が還ってきて。その羽衣を被って舞うところは、いかにもうれしげ。その姿は実に艶やか。鳥が翼を広げて舞っているよう。体幹がしっかりとしていて、なよなよしていないのが、女性の高貴さを表象しているように見える。中途から、羽衣に取り憑かれたかのように舞のテンポが速まる。ここからは能の舞台の独断場。みているものを神の世界に誘ってゆく。羽衣のシテを演じた金春穂高さん、非常に才能のある方なんでしょうね。

ワキの原大さんは声が素晴らしかった。舞台が始まり、ワキが登場。ワキが語り始めると、一挙に能舞台は異次元空間になる。それを可能にしているのが。彼の声のよさ。世の奥底から響き渡るような深みのある声。それに呼応しての地謡の方々のコーラス。まさにこの世ならない世界がそこに現出していた!

能のパフォーマンスが神事であることを、改めて認識した能舞台だった。能も整った会館の舞台で演じられるのもいいけど、こういう俄仕立ての舞台、それも戸外で演じられてこそ、その発祥のときの勢いがわかるのかもしれない。先日春日大社の会館で見た「黒川能」も現地の神社で見た方が、ずっと迫ってくるのだろう。そんなことを考えながら見ていた。

とはいえ、この寒さは身に堪える。途中からはブルブル震えながら見ていた。このあとの狂言も素晴らしかったけど、それは別記事にしたい。結局、三番目の『黒塚』は最初の10分だけ見て、退出。冷え切った体を温めに、駅前に走った。

デジカメを持っていなかったので、カメラの性能の良くないスマホで撮影。感じだけでも。

ワキが羽衣を持って。

シテ登場。

衣を着て。

舞。